早起きは三文の徳(3/3)


黙々と菓子を頬張り続ける私の手は止まらない。ルッスーリア様手作りのお菓子は次々と私の胃の中に収まっていく。目の前のルッスーリア様とマーモン様が冷や汗を流しているようだが、遠慮はいらないとのお言葉に甘えて、私の手が止まることはない。


「う゛ぉ゛おい!なんだこの甘ったるい匂いはァ!」


大きな音を立てて扉を開け、談話室へと入って来たのはスクアーロ様であった。スクアーロ様に続いてベル様、レヴィ様もいらっしゃる。何の偶然か幹部が勢揃いになったようだ。

私達の目の前にある空の皿の量に彼らは一瞬戸惑ったようだが、すぐにベル様が「ししっ」と笑った。


「三人ともちょっと食い意地張り過ぎじゃね?」
「それは少し違うよ」
「これ、ぜ〜んぶアルちゃんが食べちゃったのよぉ」


今度こそ完全に彼らの思考が停止した。最後の一口となったクッキーを呑み込んだ。


「う゛ぉ゛おい!嘘も程々にしやが」
「るせぇ、ドカス」


目の前をワインのボトルが猛スピードで通り過ぎて行った。ボトルの行きつく先はスクアーロ様の頭。ああ、後始末が大変そうだ。ペロリ。また一つケーキを1ピース平らげた。

私の食べるスピードを見て、スクアーロ様も髪からワインを垂らしながら真実と納得するしかない様子。そんなに見つめられても私から出るものはメイドとしての給仕しかないのだけれど。


掃除器具を取りに行く前にせめてもう一つぐらい、とミルフィーユを口に入れた。そんな私を見てザンザス様が口角を上げた。


「ハッ、これが噂の暴食か」
「む!?おのれ貴様!ボスに何を吹き込んだ!」


吹き込むも何も、私は何も喋っていないけれど。反論する前にベル様がナイフを投げたので私が出る幕はなかった。


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