億万長者(2/5)


「君が新しく雇われたというメイドかい?」
「はい。本日よりお世話になります」


無事ヴァリアーへの就職が決まった私は、後日来た連絡通り荷物を纏めてヴァリアー邸を訪れた。住み込みの契約なのだ。家賃も浮き、仕事に集中出来る。暗殺部隊という名であるゆえ、安全な場所とは言い難いが思った以上に条件が良い。

これから恐らく私の上司となる執事の方に厨房、掃除器具の置き場所、浴場等の案内をして貰い、移動をしながら仕事の説明を受ける。
その間気になったのが、他の使用人の姿がこの人以外に見えないこと。そしてこの執事も包帯まみれということ。


「君もこれから大変だろうが……頑張ってくれ。いずれ皆復帰する」
「……え、あの、まさか…」
「暫くこの広い屋敷を『一人』に任されるのは辛いだろうが…幹部以外の皆様はご自分で何とかされるとおっしゃっておられた。辛坊してくれ」


そ ん な の 聞 い て な い !

引き留める間もなく執事さんはそそくさと退散していった。その場には私一人ポツンと取り残される。

これは詐欺だ。求人広告にはそんなこと書かれていなかった。このバカでかい屋敷を一人で!?食事等は幹部の方だけとは言え、いくらなんでも重労働過ぎる!

けれど私の求めるお金のため。億万長者の夢のためだ。ここは耐えるしかない。だから私は泣き寝入りするしかなかった。


<<< >>>

back




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -