▼人生、意気に感ず(2/5)
呻き声と共にGHOSTは沢田くんに完全に吸い込まれた。けどおかしい。吸収されたGHOSTの炎が沢田くんの炎に変換されていない。
「いやぁ、すごいすごい。GHOSTを倒しちゃうなんてさ♪また元気な君に会えるのは嬉しいなぁ。綱吉クン」 「白蘭」 「ボンゴレファミリーの主力メンバーが勢揃いでますます嬉しいよ♪」
沢田くんの味方呼ばわりされて、ザンザス様の気に触れたようだ。彼の銃が火を噴いた。骸さんも同様に攻撃を仕掛けた。けどガス欠の状態では白蘭に攻撃などしていないも同然。
となると、白蘭とまともにやり合えるのはただ一人。沢田くんと白蘭の一騎打ちだ。
白蘭は遊ぶように沢田くんの攻撃を受け流す。圧倒的な力量差。GHOSTが吸収した炎は白蘭に流れていたようで。その力量差はつまりそこから生まれたのだ。 それを証言した白蘭の背からは炎で出来た羽が生えた。先程のGHOSTはパラレルワールドから連れて来た別の『白蘭』らしい。だからあんな不確実な存在だったのだろう。
リングから発せられた炎の衝撃が空気を揺らす。さりげなくザンザス様が庇ってくれている。相当な炎圧。空気が痛いとはこういうことなんだろう。
「ボク、アルチャンのこと結構好きだったんだよ。他のパラレルワールドではとっても役に立ってくれたしさ。本当だよ?」
この世界じゃそうじゃなかったみたいですけど。「そうですか」とだけ返しておいた。
「でもマフィアに従うなんて、君も面白い子だよね♪猛毒への耐性とか、7種類の炎を使えることとか、ぜーんぶマフィアに体を弄られて身に付けたものなのにさ」
誰かがハッと息を呑んだのがわかった。なんで白蘭がそれを。いや、パラレルワールドを行き来する力を持っているのなら知っていてもおかしくはないのか。
「エストラーネオファミリーの人間兵器…『バアル』」
私の二つ名にして、実験体の呼称。じとり、と握り締めた拳の中で汗が伝った。
「過去は…関係ない…」 「ハハッ!それはどうだろう。いつだって君の心を埋め尽くして来たのはお金と自身の命だけじゃないか!君の過去のせいで!」
「絆は君が一番信用していないものじゃないか」
ドクリ。心臓が跳ね上がる。そうだ。信用出来ないものの上には立ってはいけないんだ。立たない方がいい。そうわかっているのに、なぜ私はこんなにも動揺しているのだろう。
「っるせぇぞ。カスが!」
隣にいたザンザス様が白蘭に向けて銃をぶっ放した。ああ、そうだ。この人はいつも煩わしいことは「カスが」と言って踏み倒してきたではないか。その強さが少し羨ましくて、少しほっとした。
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