▼時は金なり(3/3)
一旦ヴァリアー幹部に召集がかかり、私のことをザンザス様より説明された。何らかの原因により私は過去に戻れなくなってしまったようなので、細心の注意を払うようにと。
にしてもこの私が10年経ってもヴァリアーに勤めているとは。短期間でころころと職を変えていた私にとっては非常に珍しい。永久就職先と心に決める出来事でもあったのだろうか。自分のことなのにわからないなんて、なんだかもどかしい。
「10年前のアルちゃんも本当にキュートねぇ!」 「へー。これがアル先輩の10年前なんですねー」
まじまじ。私の顔を覗き込むカエル、ではなくてカエルの被り物を被った青年。この10年の間に幹部の入れ替えがあったのだろうか。
「一応初めまして、ですね。…えっと」 「ミーはフランと言いますー」 「フラン様、でいらっしゃいますか」 「ししっ、こいつはコーハイなんだから様なんかつけなくていいっつーの」
「え、あ、はい」曖昧な返事になってしまったのは致し方ないと思う。
ところで、細心の注意を払うように、とはどういうことなのだろうか。何となく空気がピリピリとしているような気がする。
「そう言えばマーモン様の姿が見えませんね」 「ミーの先任の幹部のことですねー」 「あー。マーモンなら死んだぜ」 「マーモン様が、ですか…?」
曲がりなりにもあのアルコバレーノの一人。そのマーモン様が、亡くなられた?任務等でやられるほど弱い方ではないはずだ。この時代、何か私の知らない危機が潜んでいるのか。危険な香りがする。
「おい、説明してやれ」 「チッ…めんどくせぇな」
「耳の穴かっぽじってよぉーく聞けよ!」そんな大きな声ならかっぽじる必要はないと思う。むしろ塞ぐべきだと思うのだけれど。説明を受ける立場なのだから抗議はしなかった。
「まずこの時代のボンゴレは壊滅状態に陥っている」 「イタリア勢力最大のボンゴレが…ですか?」 「フン!ボスのボンゴレをあのクソガキ共め」
成る程。それでこんなに殺気立っているというわけですか。確かにボンゴレの勢力は揺るぎないものであった。その崇高な歴史を崩されたのだ。地位と一緒にプライドもズタズタにやられてしまったのか。 でもボンゴレを簡単に壊滅させる勢力なんて10年前には存在しなかったと思うのだけど…。この10年で成長を遂げたとしても、そうすると10年前はなんと巧みに陰に隠れていたことになるのか。
「この時代の戦い方は10年前とはまるっきり違ェんだよ」 「まるっきり…?」 「リングを使うんだよ。リングを」
この時代の知識はほぼ皆無と言っても過言ではないかもしれない。知らないことがあまりにも多すぎる。
話を聞く限り、この時代では身体能力の高さだけでは勝てないらしい。新しい戦い方を身に着ける必要があるとか。
「リングと匣。この二つが主な兵器になるのよぉ」 「使い方はまた今度教えてやる。だがこの時代の戦い方を知らねェお前はただの足手纏いだ。戦えるようになるまで屋敷から出るんじゃねェぞぉ!」
リングに匣。まるでお伽話のようだと思う。魔法を使うような戦い方だ。そんなことがあり得る世の中になるだなんて。世界は10年経つとこんなにも変わるものなのか。
何はともあれ、何も知らない私はスクアーロ様の言う通り足手纏いだ。早いところ慣れてしまわなければいけない。でないとあっという間に殺されてしまう。
「あ゛ー、にしても腹減った」 「…あ、アイスならありますよ」
そういえば私はベル様のお遣いの途中で未来に飛ばされていたのだった。アイス、溶けていないといいのだけれど。
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