聞いた百文よりも見た一文(2/3)


夜明けと共に戦いが始まった。未来を見通す力があるというユニさんの言うことには、これが最後の戦い、白蘭との決戦となるらしい。

後方支援の私は、愛用の銃にスコープを着けて標的に狙いを定める。先制攻撃を仕掛けた獄寺くん達は元々手傷を負っていたところにさらに怪我を増やしていた。だがそれを無駄にはしない。彼らの奇襲により大体の行動パターンは読めてきた。辺りは土煙で視界が悪いが、開ければ最後。確実に仕留める。

デイジー、トリカブトと違った古代の恐竜の修羅開匣は驚いたが、今は驚きで戸惑っている暇はない。あの強力なリングさえなければ、あの姿でなくなるかもしれない。

――空気が動いた。


「まーったく。ザクロ、なっさけなーい」


ザクロからではない。別方向からだ。標的が一人追加、だとは分が悪い。

「ププッ」と笑ってブルーベルは修羅開匣した。彼女の匣も古代生物なのか。ブルーベルの小さなオウムガイが獄寺くん達を襲う。動きの取れない彼らが攻撃を避けられるとは思わない。

素早く匣兵器に狙いを定めて軌道を逸らす。「誰!?」とブルーベルが声を上げて周囲を探った。


「…ふーん。まだどこかに隠れてるってわけねー」
「んだと!?どこにいやがる!」
「でも。大技でやっちゃえば問題なーい♪」


ブルーベルとザクロの大技が展開する。大技ばかりは銃で軌道を逸らす、なんて真似は出来ない。開匣も間に合わない。
どうすれば、と思った時だ。どこからか猛獣の雄叫びが聞こえた。ブルーベルの匣が石化し、崩壊する。


「がん首揃ってんじゃねえか」


その低い声を聞いて、構えていた銃を下ろした。黒い衣装が暗殺者であるということを際立てている。


「沢田に伝えろ。ボンゴレ9代目直属暗殺部隊ヴァリアーは、ボンゴレの旗の下、ボンゴレリングを所持する者共を援護する」


ベル様に体を支えられている獄寺くんは驚愕の表情を見せた。す、と彼らの傍へ寄れば土煙の臭いが鼻をついた。


「まさか、皆様がいらっしゃるとは思いもしませんでした」
「まったく。勝手にどこか行っちゃダメでしょ?アルちゃん」


ぷんすか、と怒るルッスーリア様に謝罪を入れた。いつかもこうして謝ったような気がするが…と思いアルコバレーノの試練の時だと思い出した。なぜ私はこんなにもルッスーリア様に叱られることが多いのか。

飼い主が飼い主なら相棒も相棒ね、とルッスーリア様がベル様と獄寺くんの言い争い?と言う程のものか…とにかく言い合いを見ながら感想を言った。まったくもって同感です。


「スクアーロがどこにいるか知ってるかしら?」
「今のところは生死不明です」


運が良ければ生きているかもしれませんね、と付け加えた。時間稼ぎのためとはいえ、置いて行ったことを責めているのか、獄寺くんは元からある眉間の皺をさらに深めた。


「ハッ、死んだか」
「ハッ、死んだか」
「てことは、次期作戦隊長は私?」
「ししっ♪これでドつかれなくて済む」


私も喜んだ方がいいのだろうか?うるさい爆竹がいなくなった、と。とりあえずザンザス様の真似をしたがるレヴィ様は一度潰れればいいと思う。

パラレルワールドを行き来出来る能力を持った白蘭に攻略されている可能性が高いので、型のある技は使わない方がいい、とアドバイスする獄寺くんを「うるせぇ」と憤怒の炎を手にしたザンザス様は一蹴した。


「かっ消せ!」


白い猛獣がまた吠えた。


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