▼残り物には福がある(2/3)
ハルさんが提案した不動産会社の店主のお婆さんは3年前に既にぽっくりと亡くなっていた。代わりに店を継いだ通称川平のおじさん。どうやら彼は私達の事情に通じているようで、快く匿ってくれた。怪しさ満点だが、とりあえずは彼の親切?に甘えるとする。
結果、見事ザクロを撒くことが出来た。川平のおじさんの奇妙な技によって。 並盛中学では別の真6弔花、デイジーと雲雀さん、ディーノ氏が交戦を繰り広げたらしい。このおかげでデイジーは敗れ、追手は一人減った。
暫く旅に出るのでこの店は好きに使ってくれ、と川平のおじさんは出て行った。川平さん、不思議な人だ。
そのままアジトに戻ってスクアーロ様の様子を見に行く、と言った山本くん達も不動産を去った。私には入江さんの護衛の依頼があるので同行は無理だ。それにスクアーロ様の言い付けもある。行け、と。
「それじゃあ、気を付けて」そう見送った時だ。気配を消してはいるが、不穏な空気を感じる。沢田くん達は感じていないのか。どこだ、どこにいる。私が気配の居場所を探している間に無線から山本くんがアジトには無事入り込めそうだ、との報告が来た。
「アル…?どうかした?」
よく探せ。よく。ユニさんもクロームさんもぐったりとしている。異変を体で感じ取っているのだ。沢田くん達はわからないのか。彼らが異常に気付いていないのなら私がどうにかするしかない。
「ユニー遊んでーねえねえユニー」
ランボさんも呑気。ついさっきまで殺されると騒いでいたのに。 彼に目をやって、漸く見つけた。首を掴み壁に押し付け、その頭に銃を突きつける。
「な、何やってんのアル!?」 「違う、ボス…!よく見て…!」
クロームさんの指摘に従いランボさんの後頭部を見れば、黒い霧が纏っている。その笑い顔はどう見ても、ランボさんの無邪気な顔とは似つかない。
「ランボさんはねぇ、今までみたいに外から攻めて逃げられちゃうの嫌だから、内側に入り込んだんだよ」 「ただの幻術なら、殺すまでだ」
引き金を引く前、霧に姿を変えた彼はユニさんを連れ去った。真6弔花のトリカブトだ。本物のランボさんは縛られてソファーの下に隠されていた。なんという失態。敵の侵入をこんなにも簡単に許してしまっただなんて。
慌てて店の外へと急ぐと、残りの真6弔花の桔梗とブルーベルまでもがいた。計算された作戦だったのか。ブルーベルと桔梗の匣兵器が私達を襲う。その間にトリカブトがユニさんを連れて遠くへ。
このままではユニさんを易々と引き渡すことになる。どうする、と唇を噛んでいると何者かがトリカブトを攻撃した。宙へ放り出されたユニさんの体をその誰かが抱きかかえた。
「お怪我はありませんか?姫」
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