▼金字塔(6/7)
どうにかしてクロームさんを救出しようと思っても…
「……いやぁ。これ、無理じゃないですか?」
肝心の黒曜ランドがないのなら話にならないのでは…。目の前に広がるのはただの更地。入り口の看板はちゃんと黒曜ランドを示していたから、迷子という可能性はない。
「これは初代霧の守護者、D・スペードの幻術だ」 「そうなんですか。えーっと…嵐の守護者のGさん、でしたっけ?」
そうだ、と顔に刺青のある彼は頷いた。
「それで、守護者でない私はその霧の守護者さんがもし貴方の意思にそぐわないことをしたら沢田くん達に手を貸す。それだけでいいのですね?」
すまないな、とプリーモは言った。死人に物を頼まれるのなんて、面白そうなので別に構わないのですがね。サポーターの役目も果たせているようですし。
んー、でも困ったものだ。どうやってこの幻術の中に入るべきなのか。私一人の力ではこの幻術を破ることは出来ない。私は生粋の幻術士というわけではないのだ。 どうするべきか。少し思案した後、近くの花壇の縁に座り込んだ。
「何をするつもりだ?」 「ちょっと精神世界に行ってきます」
それじゃあ、と挨拶もそこそこに意識を飛ばした。 体が揺らめく感覚を感じたところで、ゆっくりと目を開く。私の世界に間違いない。成功みたいだ。
「こんにちは」 「どうも。最近はよく会いますね、アル」 「クロームさんの様子がおかしいのですが、何か知りませんか?」 「おやぁ?いつの間に仲良くなっていたのやら……まあ、そんなことはどうでもいいですか。クロームはどうやら何者かに苦しめられているようでしてね」
やはりそうであったか、と自分の中で勝手に納得した。プリーモ達は何も言わなかったが、きっとあれは初代霧の守護者による精神の錯乱であろう。初代も試練とは言え、酷なことをするものだ。
「ならお願いがあるのですが、黒曜ランドの幻術に道を作ってください。というか作れ」 「クッハー!横暴ですね!!君、主人にそっくりになったんじゃないんですか!?」
耳に毒な笑い声だ。幻術で拳銃を作って一発撃った。クロームのためですからね!と念を押して骸くんは霧のように消えていった。おかしいな。あの人昔はあんなのじゃなかった気がするけど。いや昔からか。けど今はクロームさんが心配なので彼のことは放っておこう。
現実で目を開けて、道が開いていることを確認してから黒曜ランドに乗り込んだ。
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