星の瞬き | ナノ

  帰郷


暗闇にはいくつかの黒い影があった。宙に映し出された映像のようで何度か姿がぶれる。

大半は赤い雲の描かれた黒いコート。それ以外の中の一つは何の模様もない、真っ黒のコートを着ていた。


「二年半という時間は案外短かったですね」

「オレ達の計画も順調に進みつつある」

「とうとう本格的に始動するのね」

「……やっとだ」


全身黒の人物は空を仰いだ。服とは正反対の、金の髪がなびいた。

ゆるりと唇が弧の形をとる。それを見た彼らも口角を上げた。


「オレは夜であり、月だ。闇にいる君達を夜明けまで導こうではないか」


夜は明ける。日は動く。


*****


「二年半ぶりか…」

「そうだのォ…」


木ノ葉の里の門をくぐり、里の中を歩く二人の男。一人は腰に一本の剣を携え、背にうちわのマークが入った服を着ている。もう一人は歌舞伎役者を連想させる格好に額に油という文字が入った額当てをしている。

二人とも里にとって有名人らしく、大通りを歩けば注目が一挙に集まる。


「この二年半、あんたに師事してもらうのは間違いだったかもな」

「生意気なやつじゃのォ…。ナルセはもうちーっと可愛げがあったぞ」

「フン。事実あんたから学んだものは少ない。独学の方が多かったと言ってもよかったぞ」


うちわマークを背に負った少年、サスケは歌舞伎役者風の男、自来也の嫌味を無視して先に進む。サスケに気付いた人々、特に女性は微かに頬を紅潮させたりしている。


「この里も変わらないな」


ふと上空を仰ぎ見れば、木ノ葉のシンボル、火影岩がサスケの目に入った。現在火影岩は合計五つ。旅に出た二年半の間に五代目火影の綱手の顔が追加されていた。

「(…あいつがオレの為に連れて帰ってくれた火影)」それを何とも言えない目で見つめる。


「サスケく〜〜ん!!」


声がした方を見ればサクラが向こうの方から駆け寄って来た。少し大人っぽくなったサクラもまた頬を赤く染めている。


「サクラか」

「サスケくん久しぶり!その…かっこよくなってて…」


あの、その、とチラチラとサスケに目線を向けながらサクラは必死に言葉を紡ごうとしていた。


「自来也、火影邸に急ごう」

「ちょ、ちょっとサスケくーん!?待ってよぉ!」


女心を無下にするやつじゃ、と自来也はがっくしとした。


*****


「久しぶりだなぁ、二人とも」


火影室にて綱手、シズネ、それからシカマル、テマリ、続くカカシとの再会後、第七班は三年前と同じように鈴取合戦を広げることとなった。

懐かしの第三演習場。あの班で初めて演習を行った場所である。


「あの時は…ナルセもいたっけな」


カカシの言葉にサスケとサクラの二人は昔を思い返した。無邪気に笑っていつも自分達を励ましてくれたナルセ。懐かしくもあり、楽しかったあの日々。

それを思い出すと、二人は目に見えるほど落ち込んだ。


「(ナルセの名前はこいつらには禁句だな…)」


チリリンと音がした。二人が音のした方を向くとカカシが見覚えのある二つの鈴を取り出していた。


「ま、どれだけ成長したのか見てやる。ナルセのことは諦めちゃいないんだろ?」


「もちろん」と言ったサクラが立ち上がったと共にサスケもいつものすかした笑みを見せる。満足そうにカカシが頷いた。


「ルールは初めてお前達と会った時と同じ。どんな手を使ってもいいから、オレから鈴を取ればいい。オレを 「殺すつもりで来ないと」

「取れないから、でしょ?」


二人にはいつもの余裕が戻っていた。その通り、とカカシは言う。期限は明日の日の出まで。

サスケは刀に手を添え、サクラはグローブを手にはめた。カカシは読みかけの本を閉じる。


「今度は本を読みながらやらないんだな、カカシ」

「それとも、もう読み終わっちゃったんですか?」

「いや、楽しみは後に取っとこうと思ってね。それに、ま。今回はなんとなく…オレも少し、本気出さないといけない雰囲気だしな」


カカシは本をポーチに仕舞い込む。そして片目を隠した額当てを捲り上げた。カカシの写輪眼が露わになる。


「じゃ、スタート」


どろん、とカカシの姿が消えた。


サクラが右、上、左、後ろと順にカカシの気配を探る。しかしそこにカカシの姿はない。それならば


「下ァ!!」


サクラが地面に向けて拳を振るうと小さな地割れが起こった。小さい、と言っても普通の人間ならばなし得ることのできないことだ。「…え?」あまりの馬鹿力にサスケとカカシは唖然とした。

「見ぃつけた」にんまりとサクラが笑った。三年前のひ弱な女の子の面影はどこに消えたのか。


「ナルセが教えてくれたのはこうなることを見越した上かもね」


サクラのチャクラコントロールの才能に目をつけたのはナルセだ。医療忍者という花に水を撒いたのは綱手ではあるが、種を撒いたのはナルセなのだろう。

サクラは得意気に笑みを浮かべる。「(綱手様以上の怪力かもな…)」冷や汗をかきながらカカシは地面の中から地表へと出た。


「次はオレ、か」


草薙の刀を手にサスケが地を蹴る。カカシがクナイで対応した。

いつの間にこんなに上手く刀を扱えるようになったのだろうか。カカシがそう感心するのもつかの間、サスケがニヤリと笑った。


「後ろはもらった」

「なにィ!?」


カカシの背後からもう一人のサスケが現れた。刀を薙ぐが頭を下げることで難を逃れる。


「影分身なんていつの間に覚えてきたの…」

「何のための修行だと思ってる」


三年前のように楽にいけばいいのに、とカカシはひっそりと溜め息をついた。


*****


「二人とも強くなったね〜。まさか実力で取られちゃうとは…」


サスケとサクラの手にはそれぞれ一つずつの鈴が。

サスケとの写輪眼同士の戦闘にサクラのチャクラコントロールによる馬鹿力での援護。あの後カカシはあえなく鈴を取られてしまったのだ。

本当に三年前との成長が目に見える。


「二人の成長、しかと見せてもらったぞ」


声がした方を振り返ると綱手とシズネがいた。


「うちはサスケ!春野サクラ!お前達二人とはたけカカシ、この三名によりカカシ班を編成する」


どうやらカカシとの演習は新しく班を編成するための試験も兼ねていたようだ。

メンバーの面は一人を除き、二年半年前と変わらない。またこの面子での任務が始まるのだ。


そしてまた始まる
(あれから二年半の成長)


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