散った赤い花弁
砂の里は、その名の通り四方を砂漠に囲まれている。そんな砂の里の入り口前。そこには人影が四つ。後ろには積み重ねられた赤い躰があった。
「ご苦労、由良。オレの事、思い出してくれた?」
「ハッ!もちろんですサソリ様!」
一つはこの砂の里の上忍であるはずの由良。彼は“暁”のサソリのスパイであった。術により記憶を消され、時が来ればそれを思い出し、従順な下僕となる。
血の独特な臭いがオレの鼻を掠めた。無駄な血は嫌いだ。ただ不愉快になるだけだ。自分達の目指す未来のための犠牲の血。
犠牲、なんて嫌いだ。赤い色なんて嫌いだ。手遅れになる前にとっとと処置をしておこう。
「!貴様ッ、サソリ様に近付くな!!」
何を勘違いしたのか由良はオレに刃を向ける。勘違いやろうも嫌いだ。早くそこをどけて欲しい。
「よせ、由良。そいつに傷をつけるな」
「そ、それは…すみません」
全く面倒なの。目の前からどいてくれた由良の隣を通り過ぎて赤のところへ行く。
「なんだ?そいつら治すのか?…うん。お人好しだな」
「治しても無益。このまま放置したら損害。メリットを考えてのことさ」
だからこれは善意からじゃない。そして後に自分を自分で責めないようにするため。全部自分が得になるように行動しているだけ。
この赤は嫌いだからとっとと消してしまいたい。素早く応急処置だけしていく。治療といっても応急処置だからな。早くこの里の人間が気付かないと本当に死んじゃうかも。
そうこうしているうちにデイダラが掌の粘土の鳥を作り上げていた。放り投げて人が乗れるほどの大きさにする。
これからデイダラは一尾狩りに向かう。オレとサソリはここで待機。
「じゃあね、いってらっしゃい。気をつけて」
「オイラの芸術を見せてやるぜ…うん!」
そのままデイダラは鳥に乗って飛んで行った。さて、このまま待っているのも面倒だしな。折角砂の里まで来たんだ。このまま帰るのはもったいない。
「はじめのいーっぽ」
これが記念すべき第一歩だ!
「…何してやがる。大人しくしてろ」
「嫌だね、ここまで来たんだ。観光だよ、か・ん・こ・う!」
騒ぎに生じて観光。これ抜け忍の鉄則ね!
サソリがヒルコの尾でオレを行かせまいとする。だけどね、オレにも楽しみがあるのさ。いくらサソリといえど邪魔はさせないよ。
ひょい避けてと里の中へ向けて走る。背後で舌打ちが聞こえた気がするけれど、きっと気のせいだな。
ところで、里を探索したいのも山々だが、実は人と約束がある。集合場所に指定されたところへ、目印を元に向かう。
「来たか」
「あはっ。今日はどうも…四代目風影サマ」
止してくれ、とでも言いたげに肩を竦めて彼はこちらを向いた。里の人間にオレ達が接触しているのを悟られてはいけないから、互いにそれなりに変装をしている。
それでは、とまずは情報の交換から始まる。挨拶はそこそこにってなってしまうのは仕方ないと思う。あはは。一里のトップと反乱因子がつながっている、なんて世に知られたらどんな反応を見せられるのか。
そろそろ日も暮れるかな、という頃合い。ドォン。爆音。と空中の砂。デイダラだな。始まったのか。相変わらず派手な。
「本当にいいのか?」
「どちらにせよ、我愛羅、守鶴は狙われるのだろう?」
「……いずれ」
ならば君に任せた方がいい。そう言われてしまった。プレッシャーを感じてしまうけれど、任された以上オレも全力を尽くすとしよう。
これから一気に畳み掛ける。今まで以上に忙しなくなることだろう。
「息子を、どうかよろしく頼む」
それは確かに、父の声だった。
「あはは。オレの目指す世界のためにも、あなた達のためにも、失敗はできませんねぇ」
ま、頼まれときましょう。
話は以上。それでは、と前風影サマに背を向ける。やっと観光ができそうだ。上もまだ続くだろうしな。
さあ、この里にはどんな甘味があるのかな?
計画、始動
(マスターこれ美味すぎるよ!)
(そんな褒めないで欲しいわぁん!もう!サービスしちゃう!)
(マスター最高!よっ、これぞ大人の魅力!)
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