星の瞬き | ナノ

  化け物である故の


右手に花束、左手には果物。そして目の前には木ノ葉病院。今日は予選で体をズタボロにし、入院してしまった人のお見舞いに来た。

チョウジとリーと、それからオレの天使のヒナタに会いに来た。…チョウジは焼き肉の食い過ぎって聞いたがな。


「チョウジー、元気かってば?」

「あ、ナルセお見舞い?ありがとう」


小さな花束と少し多めに入れてもらった果物を手渡す。果物を見たときの嬉しそうな顔はこっちまで嬉しくなりそうだ。それぐらい幸せそうに笑った。


花瓶に花を活けているとシカマルがやって来た。

チョウジの病室からだとヒナタの病室のほうがリーのところより近いのでそちらに先に行くことにした。


シカマルもついてくるそうで、一緒に行くことになった。


ヒナタも思ったより怪我が酷くないようで安心した。

本選出場おめでとう。頑張ってね。
あはは、あんまり嬉しくないけど出来るだけ頑張るよ、みたいな感じで。

あまり長いをすれば体に毒なので少しだけ話して別れた。



次はリー。第二の試験でとてもお世話になったので是非とも礼を言いたい。

扉を開ければ我愛羅がいた。眠っているリーに手を伸ばしていた。


「(おいおいおい…!)」


病室に駆け込んで我愛羅の腕を掴む。


「何してんだってば」

「殺そうとした」


あっさりとした答えが返ってくる。てか、あっさりすぎんだろ!?リーも泣くぞ!


我愛羅は体が動かないことに微かに動揺しているようだ。

シカマルの影真似の術。我愛羅も自分の影とシカマルの影が繋がっていることに気付いたようだ。


「何でンな事する必要がある?試合ではてめーが勝ったろ!こいつに個人的な恨みでもあんのか?」

「そんなものは無い」


じゃなんで殺すんだよ!?あれか、殺人鬼の心理か?
殺したかったから殺した。ただそれだけだ。みたいな?


「ただオレが殺しておきたいから殺すだけだ」


当たっちゃったよー!
それじゃリーも可哀そうだ。我愛羅の我儘に付き合って殺されるなんてな!


力を取り戻したオレにとって死とはそこまで悲しむべきものではないが、シカマルは我愛羅の異常を感じ取ったようだ。


我愛羅も余裕だな、ニ対一だというのに。多勢に無勢ってこういうことで使い方あってるのか?


「お前…自己中だな、ろくな育ち方してねーだろ」

「オレの邪魔をするならお前らも殺す」

「ま、まあまあ二人とも落ち着けってば。な?な?」


険悪なムードになりつつある二人を宥め尽かす。


シカマルも相手のことをよく知りもしないのに貶めて。我愛羅は我愛羅で引くつもりもないし。

なーんでこう若い者は血の気が多いかね


「お前もそんなこと言ってると化け物呼ばわりされっぞ」

「……オレはすでに化け物だ」


オレは冗談で言ったというのに我愛羅は真剣な顔付きで言葉を返す。


そこから我愛羅は語り始める。

母の命を奪って己が生まれたことを。父が生まれてすぐの己に砂の化け物を、一尾を憑依させたことを。


「…それが親のすることかよ。歪んだ愛情だな」

「愛情だと?お前の物差しでオレを測るな」


家族など自分にとっては憎しみと殺意で繋がるただの肉塊だと我愛羅は言う。


風影の子供として、自分は過保護に育てられた。

でもそれも六歳までのこと。その歳から六年間、自分は実の父親に何度も暗殺されかけたのだと。

強すぎる存在は恐怖になる。そして里から危険物と判断された自分は暗殺者を仕向けられ続けた。


だからこそ、自分は殺すのだ。自分の存在を証明するために。自分を愛するために。


恐怖を感じたシカマルはひゅっと息を呑む。



……って重っ!オレ冗談で言ったはずなのに何でこんな重い方向に向かってるの!?


気が付けばいつの間にかサラサラと大量の砂が出ていた。とにかく、この場を鎮めるしかない。


「落ち着けって言ってるだろ」
「そこまでだ!」


…ガイせんせー、タイミング悪いよ

ピンチに駆けつけるヒーロー、という風に見ることも出来るが、今のオレにはこの場を鎮圧させようとしたところに現れた邪魔者にしか見えない。


ちらっと後ろを見れば、シカマルはだらだらと冷や汗を掻いていた。我愛羅の恐怖に圧倒されたのだろう。

まったく仕方のないやつらだ。


「我愛羅だったっけ?とりあえずオレと来いよ、な?な?」


すでに術を解いているのは分かっている。我愛羅の腕を掴み、病室を出る。シカマルはオレのことを止めようとしていたが気にしない。

ガイ先生にすれ違いざまにリーに礼を言ってほしいと言伝を頼み、その場を去った。




*****





病院を出て、町を出て、森を抜け、オレの家に着く。

その間もオレは我愛羅の腕を離さなかった。我愛羅も振り払おうと思えば出来たのに、それをしなかった。


「たっだいまー。白、今日のご飯はちょっと豪華にしてね
我愛羅、泊まってる宿はどこだ?」


我愛羅の宿を聞き出し、再不斬にお使いを頼む。



「今日は家に泊まっていけよ」



ダイニングのソファに座らせ、お茶の準備をする。予選で勝利したことにより同班員から搾り取った玉露入り茶葉と高級最中を出す。

そしてそのまま対峙するように向かい合わせで座る。


「お前よォ、ちったあ自分を大事にしろよな。自分を愛することがそんな方法なんじゃ、お前いつか壊れるってば」

「…お前に何がわかる」

「なーんにも。ただ、人柱力の痛みは同じ人柱力じゃないと共感できんだろ。あの場にいたままであればお前はまた傷付いた。

狸君、少しは休みたまえ。お前は自分の愛し方を誤っている。たとえば、だ。オレの場合、自分を愛するのはこんな風に甘いものを食べることだってば」


包みを開けてもそもそと食べる。
お、さすが高級というだけはあるな。中の餡子がうまい。



我愛羅は狸と聞いて直感した。

こいつはオレに何が憑依されているのか詳しく知っていると。同じと言った、同じ人柱力と。


理解できない


オレは人を殺して世界がオレの為にあると証明している。でも目の前のこいつは休めと言った。いつか壊れるとも。


「……お前はよく分からない」

「何だそりゃ」


その日は一緒に晩飯を食べ、寛ぎ、寝て過ごした。ナルセはその日一日中、我愛羅の傍につかず離れずにいた。


「なぜお前はお前をこんな状況に追い込んだ奴らを殺そうとしない」


我愛羅がナルセに抱いていた疑問を口にする。ナルセは瞬きを何度かして問いに答えた。


「殺しても次が来るだけだ。そいつを殺してもまた次が。次を殺せばその次が。延々と繰り返すだけだ、何も変わらない

何も変わらず、ただ繰り返すというのは疲れるだけだ。オレは疲れることが嫌いだからな」


その時の拍子抜けした我愛羅の顔は面白いものだった。



翌朝、暇であればまた来いと誘いオレ達は別れた。

我愛羅がまた来ればオレの晩飯が豪華になるからな!



胸の痛み、孤独の辛さ
(理解は出来ない。共感出来るだけ)


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