目の前に映るのは
ああ、人生とはなんと儚いものなのだろうか。
たった一瞬の出来事で散り逝くなんて。
私は一般家庭に生まれ育った。
優しい両親、姉とそして弟に囲まれ、十六まで生きた。
私はいわゆる要領の良い人間で、幼い頃から勉学を苦痛に感じなかったし、進学校に進むこともできた。
そこで、互いに信じ合えて笑い合える友と出会うこともできた。
人並みに笑ったし、人並みに泣いたし、人並みに苦しんだし、人並みに幸せだった。
だが、それがどうした。
命とは一瞬で簡単に消えてしまうじゃあないか。
私が今まで培ってきたもの全てが、この一瞬で無くなるというのだ。
もはや絶望以外の何物でもない。
ああ、こんなにも悔しいというのにもう周りの音さえも聞こえない。
解るのは私の手を濡らす己の生ぬるい体液だけ。
最期に見るのは愛しい友人の笑顔が良かったと思うのに、今私に見えているのは
赤い紅い色だけ
(もし私の願いが叶うのならば…)
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