星の瞬き | ナノ

  手を伸ばした先は


一歩、また一歩と足を進めるたびに呼応するかのように水面は波紋を広げつつ揺れる。

波の国特有の霧が深い中、黒髪をたなびかせてゆらゆらと歩く。


水面を歩くための下忍には難題のチャクラコントロールをそつなくこなしている。


ふとしゃがみこんで水面に映った己の顔を撫でれば、ゆらゆらとその顔が形を無くす。

頬に睫毛の影を落として、もう戻れない世界を追憶する。




ああ、友はもう私のことなど気にせずに笑えているだろうか。

父は、母は元気に過ごしているだろうか。




いくら憂いても、私にはもう確認する術などないというのに。

私の跡をつけていた九喇嘛が、私の心中を察したのか足元に擦り寄ってきた。


感謝の意を込め頭を撫でる。




過去とは戻れないもの




そんなことは理解できている。

それでも諦めきれないものもある。


やりきれない思いが桶から水が溢れ出るようにこぼれてくる。

それがもどかしくて膝に頭をつける。




「こんなところにいたの」




慣れ親しんだ声の主の方に黒漆の瞳だけを向ける。


「それ、一体誰の姿?」


カカシは私を指差して問う。

マスクに隠れてわからないが口元は弧を描いていることだろう。

目はその反対で。私を探るように。奥を覗き込むように。正体を見極めるように。


ゆらりと立ち上がって己の手を見つめる。

“今”の姿ではなく“昔”の姿はすらりとした指に、今と頭ひとつ分違う背丈。


いずれ背は伸びるというのに同じにはなれない“今”。

彼女が見てくれた“昔”ではなく“今”。




思わず自嘲の笑みを浮かべる。

そして先程カカシが問うた疑問に答える。






「私であり私でなく、オレでありオレでないもの」






十三年前の憂い
(今の自分に不満を感じているのは)
(きっと自分自身)


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