星の瞬き | ナノ

  追憶@


オレことうずまきナルセとうちはイタチ、サスケはうちは一族の集落へと向かう道を歩いていた。

ついさっきまでクナイ投げの修業をしていたのだが、調子に乗ったサスケが失敗をして足を挫いてしまった。それでサスケはイタチの背の上。大人しく負ぶされている生意気くんが可愛らしく見えて隠れてクスクスと笑ってやった。見つかってぶつくさ文句を言われたけどな。


「明日はアカデミーの入学式だ!」


早くイタチに追いつきたいと常日頃から口癖のように言っているサスケにとって、明日は待望の日である。


「…ここでお別れだな」

「え…?」


機嫌のいいサスケを見れたなら満足。そう言ってオレは立ち止まった。

いつもならもう少し先まで一緒に帰るのになんで今日は、と兄弟は疑問に思った。


「オレも明日からアカデミーだ。どういうことか…わかるよな?」


「もう、オレとは関わるな。関わらないでくれ」そう懇願した。それはないだろう。幼馴染としてここまで付き合ってきたのに、突然突き放すなんて。

引き留めようとしてもその考えを読み取ったナルセは別の道をそそくさと進んでいった。


「今日も楽しかったよ…じゃあね」


*****


今日はオレがアカデミーに入学して初めて成績が返ってきた日だ。


「見ろナルセ。全て一位だ」

「そう。やっぱサスケはすごいよ!」


この程度の関わり合いならナルセは許容してくれた。ナルセはいつも嘘ではなく本心から褒めてくれる。

しかしどこか違和感を感じる。こっそりナルセの成績を盗み見た。ナルセの成績表の順位は半分より下だった。


「どうして…」

「オレには才能がなかったってわけだよ。わかるよな?」


嘘だってわかった。こいつがこの程度の実力のはずがない。子供のオレにはその時ナルセがなぜこんな行動を取ったのかは、理解できなかった。



その後のことだ。兄さんが、一族の様子がおかしくなったのは。


「イタチはいるか!?話がある。出て来い!」


それは兄さんと縁側で難しい話をしていた時だった。玄関に向かうと一族の男が三人、怖い顔をして並んでいた。


「何です。皆さんお揃いで」

「昨日の会合に来なかったやつが二人いる。お前はなぜ来なかった」


昨夜確かに兄さんと父さんは何か言い争っていた。兄さんは昨日の会合に出なかったのだ。


「暗部に入り、色々な面倒事に駆り出されるのはわかる。お前の父上もそう言い、何かと庇ってはいるが」

「しかし我々としてはお前を特別扱いする気はない」

「わかりました。以後気をつけましょう。そろそろお引き取りを」


弟をこれ以上怖がらせるわけにはいかない。それに近所から何か言われることも困るので早く帰って欲しいものだとイタチは思った。


「そうだな。だがその前にもう少しだけ訊きたいことがあってな」


訊きたいこと?とイタチが顔を上げた。


「昨夜南賀ノ川に身投げして自殺した、うちはシスイについてだ」


イタチは目を瞠った。自殺、恐ろしい言葉だ。


「会合に来なかったもう一人がそのシスイだ。確か、お前はシスイを実の兄のように慕ってたな」


男の言ったことに間違いはない。イタチは目を瞑った。最近は全く会ってなかったが、残念だと言った。


そんなイタチに男の一人が警務部隊が全力で捜査にあたる、と告げる。そしてシスイの遺書を取り出した。既に鑑定済み。確かにシスイの筆跡だと言う。

男はシスイは自殺したと言ったが、何の捜査をするのかとイタチは尋ねた。


「写輪眼を使える者なら、筆跡のコピーなど容易いがな」


成る程、それなら筋は通っている。イタチがシスイの遺書を受け取り、中身を見た。


「うちは一の手練れ、瞬身のシスイと恐れられた男だ。一族の為ならどんな任務でも先立ってやる男だった」

「そんな男がこんな物を残して自殺するとは考えづらい」


遺書の中の“道”という文字が目立つ。


「見た目や思い込みだけで…人を判断しない方がいいですよ」

「とりあえずその遺書をお前に預ける。それを持ってお前から暗部にも捜査協力を要請しろ」


了解したとイタチは返した。男達は踵を返す。「手がかりが出てくるといいがな」男がこれ見よがしに呟いた。


「それと、オレ達にも暗部には別ルートだってある。捜査要請を握り潰したりすれば、すぐわかるぞ」


厭味ったらしく男は言った。怒りのあまりイタチは手に力を込める。


「もっと直接的に言ったらどうです。オレを疑ってるってわけか」


イタチがこんなに怒りを表に出すところをオレはこの時初めて見た。


「ああそうだ。クソガキ」

「いいかイタチ!一族を裏切るような真似をしてみろ!ただじゃ済まさねえぞ!」


そう男が言い終えた瞬間、イタチが殴りかかった。兄さんがこんなことするなんて、とオレは息を呑んだ。


「さっきも言ったはずだ。見た目や思い込みだけで人を判断しない方がいい。オレの気が長いと勝手に判断し、高をくくるから。一族、一族…そういうあんたらは己の“器”の大きさを測り違え、オレの“器”の深さを知らぬから今そこに這いつくばってる」


低い声でイタチは男達に吐き捨てた。まるで何かに憑りつかれているようだった。いや、そうであって欲しいと思った。

こんな兄さん、初めて見た。


「シスイは…最近のお前を監視していた。暗部に入って半年、最近のお前の言動のおかしさは目に余る…お前は一体、何を考えて…」

「“組織”に執着し、“一族”に執着し、“名”に執着する。それは己を制約し、己の“器”を決めつける忌むべきこと。そして未だ見ぬ、知らぬ者を恐れ憎しむ、愚かしきこと」

「止めろイタチ!」


制止の声にイタチははっと前を見た。声を上げたのは父であるフガクだった。


「一体どうしたと言うんだ。イタチ、お前最近少し変だぞ」

「何もおかしくなどない。自分の役割を果たしている。それだけだ」

「じゃあなぜ昨夜は来なかった」

「高みに近付くため」


何の話だとフガクは言う。クナイを取り出し壁の家紋を傷つけた。一族への冒涜にフガクは歯を食いしばった。


「オレの器は、このくだらぬ一族に絶望している」


――昔からうちは一族は、この里の治安をずっと預かり守ってきた。うちはの家紋はその誇り高き一族の証でもあるんだよ

兄さんが一族に誇りを持っているのは本当だと思う。いつも兄さんばかり褒められていた。それなのになぜ兄がこんな行動を取るのかわからなかった。


「一族などとちっぽけなものに執着するから、本当に大切なものを見失う。本当の変化とは、規制に制約、予感や想像の枠に収まり切っていてはできない」


傲慢だ、それ以上戯言を言うと牢につなぐと男は声を荒げる。

優秀というのも考え物だ。力を持てば孤立するし、傲慢にもなる。最初は望まれ、求められていたとしてもだ。兄さんはそう言っていた。


「(なんで…?兄さん…)」

「もう許容できません。隊長、拘束の命令を!」


警務部隊の男の一人がそう叫んだ。


「こんにちは」


急に第三者の声がした。イタチが振り向くと、そこには土産をくるくると回すナルセがいた。土産は団子なのだろうか。つまみ食いをしていたのか知らないが、団子の串を加えている。


「これは一体何の騒ぎでしょうか?」

「九尾の…ここに何の用だ!」

「友達の家に遊びに来ただけですよ。それから少し用事が」

「こちらは貴様に用などない!失せろ!」


怒鳴り声にナルセは一瞬で間合いを詰めて、ぱっと団子の串を首に突きつけた。

あんなのアカデミーの生徒にできる動きじゃない。やっぱりナルセはアカデミーで手加減をしていたんだ、とサスケは今考えるべきでないことをその場で思った。


「そちらの事情など聞いてはいない。目に余る言動はそちらの方だぞ」


ただの子供が、こんな冷たい声を出せるはずがない。おぞましい。化け物と呼ばれるだけはある、と男達は怯む。

ナルセは串をその場に捨て、懐から一つの封筒を取り出した。


「三代目からです。うちは、シスイについて」


先程揉めていたシスイの名がナルセの口から出た。


「なぜお前がそれを!」

「さあ?三代目は使いにオレを選んだだけだ。それ以上は知らない」


鬱陶しいからその口を閉じてくれ、と言いながらナルセはフガクの胸にその封筒を押し付けた。


「イタチも少し落ち着け。周りをよく見てみろよ」

「兄さん、もう止めてよ…」


サスケの細い声にイタチは正気を取り戻した。地面に膝を、手をつき頭を下げた。


「シスイを殺したのはオレじゃない。けれど、数々の失言は謝ります。申し訳ありません」


イタチのその姿を見て、フガクはイタチの処遇は自分に任せてくれ、と言った。暗部の任務で疲れていたのだろうと付け加える。

兄さんは父さんのことを睨んでいた。見たことがない写輪眼だった。そんなイタチの腕を取り、オレの前に出たナルセは笑っていた。


「久しぶりだな、サスケ。土産もあるぞ。二人とも、あんまり無茶すんなよ!」


ナルセは先程の冷たい表情からコロッと態度を変えて、ニシシと笑った。



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