別れの言葉
砂隠れから木ノ葉に親睦を深めるために来た我愛羅達は今日、里に帰る。里の大門で立ち尽くしたまま、幾らかの時間が過ぎた。
「やはり見送りには来ないか…」
ナルセだけその場にいなかった。昨日の出来事はこの場にいる全員には知られているだろう。あんなことが起こったのだ。無理に顔を出せとも言いづらい。
名残惜しそうに里内を見つめる我愛羅にテマリが声をかける。もうこれ以上待っても来ないだろう。それに日が暮れては帰り道が危険なものになる。諦めよう、そう言いかけた時だった。
「何?もう帰んの?」
頭上から声が降って来た。皆馴染みのある声だ。ハッとして空を仰ぎ見た。
上空から飛び降りてきたのはナルセだった。くすんだ金髪を揺らしてニコニコと笑っている。来てくれたのか、そうは言わなかったが我愛羅の顔が僅かに綻んだ。
「昨日はごめん」
「気にしてはいない。胸ぐらいならいつでも貸す」
「あはは!もうあんな情けない姿見せられないな」
ほんの少し目が腫れていても、ナルセの笑い顔がいくらかすっきりしたものであることに、皆一様に安心する。
「これ、お守りとして持って行って」
ナルセは昨日受け取った青いピアスの片割れを我愛羅に差し出した。輝きはナルセの瞳のよう。既にナルセは右耳に着けていた。喜んで我愛羅はそれを受け取る。
「また」
「…じゃあな」
去っていく四人の背を第七班は見えなくなるまで見送った。
姿が見えなくなったところでナルセは里に振り返る。無表情で火影岩を見つめた。何を考えているのかはわからない。
「(カナデ、オレは…)」
ナルセは生まれ変わった二つの装飾品のことを想った。
「(お前の望む世界を作ろう)」
またねは言わない
(言えない言葉があった)
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