怒りの咆哮
火影邸には相談役に与えられている一室がある。そんな部屋に今日、オレとサスケは呼び出されていた。
お偉いさんに呼ばれるなんて今日は厄日に違いねえ、と二人で苦笑いしながらその部屋を訪ねた。
「最近、あの夜の事件についてコソコソ調べ回っているようじゃの」
コハルの言葉にピクリとサスケが反応した。あの夜、という言い方をされてもオレ達には通じる。
オレ達に関係する夜なんてのは少ない。しかも調べ回っている事件のこと。そして相談役に呼ばれるような出来事のことだ。――うちは一族が滅亡した夜のことに違いないだろう。
「率直に言う。あのことを嗅ぎ回るのはよせ」
「この…ッ、クソジジイにクソババアめ!」
ホムラに対して叫んだのはサスケではなくナルセだった。ぐつぐつと煮えたぎる鍋の湯のように、ナルセの怒りは爆発した。
「お前!わしらに対してにどういう口のきき方だ!」
「テメェらのせいでサスケはおろか、イタチもうちはもあんな目にあったんだぞ!悔い改めろ!!」
「なぜそれを…!」
二人の目が見開く。オレが知らないとでも思っていたのか。冗談じゃない。
あんな惨劇を起こしておいてまだこんな身勝手なことを言うつもりか、こいつらは。もしかすると二人はオレ達が調べていることを邪と思っていないのかもしれないが、そんなことは関係ない。
ダン、と拳を机に叩きつけた。サスケが隣で「おい」と諌めようとしたが知ったこっちゃねえ。
「テメェら年寄りが戦争を起こさなきゃ、あんなことにはならなかった!」
うちは一族に限った話ではない。国同士のいらぬ小競り合いでたくさんの人が死んだ。悲劇に悲しむ人が生まれた。多くの人が犠牲になった。オレのような人柱力もその一人。カナデだって…。
誰かが犠牲にならないと守れないものなんていらない。そんなもの、いっそぶち壊してやる。
話すことなどない。そんな命令を聞く義務はない、と言いたげに背を向けサスケの腕を掴んで部屋を出た。苛立ちのあまり扉を強く閉めてしまって大きな音を立てたが、壊れても知らない。修理費は経費で落とせ。
あんな勝手なことを言われたんだ。さっきの話を聞いて怒りを抱かないわけがない。その証拠にサスケの腕は微かに熱を帯びていた。
「サスケ、大丈夫。絶対にオレが何とかする」
そう言ったナルセは逞しかったが、その目は酷く濁っていた。
要らないもの
(こんなの間違ってる)
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