最後の教え
バタバタ騒がしく走り回るような用事はもう全て終わった。あとは隠し細工をちょこちょことするだけ。もう少しで全部終わる。
てわけで今日はのんびりとできる。久しぶりに班でのフォーメーションを確認しながらの修業。あの第三演習場で行った。気持ち悪いものではなく、いい汗を掻いたとタオルで拭った。
「…ナルセ、もう…大丈夫なの?」
チラチラとオレを見ながらサクラが不安気に話しかけてきた。どうした?と笑顔で聞き返すとサスケも気にかけていたのか、サクラの隣に立った。
「妖遁使いの、あいつのことは…?」
…ああ、あいつのことか。と笑顔を崩さないまま呟いた。距離を置いてカカシ先生がこちらを見ているのを感じる。チラリと慰霊碑を見る。
「そういうサスケだって」とちょっとからかってみた。案の定顔を顰められたので笑いを苦笑に変える。
「サークラ。サスケはこう見えて心はナイーブなやつだからさ、ちゃーんと支えてやってな」
「え…?」
「ナイーブじゃなっ!」
「んでもってサスケ。中忍試験の時も言ったがな、男なら女の子を守れよ。フェミニストになれ」
おちゃらけてそう言い、二人の手を取った。右手にサスケの手、左手にサクラの手。ハハ…柄にもなく震えてるじゃん、オレ。情けない。ふい、と俯いた。
自分がこれからしようとしていることがどれほど危険なことか、浅ましいことか、恐ろしいことか。今になって実感するなんて。
「ちょっとナルセ、本当に大丈夫なの?」
サクラの声に心配の色が混ざっているのはわかりやすかった。
「二人共…、強くなれ。そして、大切な人を守れ」
「おい…?」
「自分の望む世界を生きるんだ」
オレの言葉に二人はだんまりとした。オレの様子がどう見てもおかしいと感じ取ったのだろう。
大切なものを守る時、人は本当に強くなれるという言葉を二人に証明して欲しい。大丈夫、きっと大丈夫。二人はもう泣いてばかりの子供ではないんだ。
「なーんてね!」とニコリと笑って顔を上げた。
「さーさ、今日はもう終わりだし帰ろうぜ!」
ほら荷物取って来いよ、と二人の背を押した。オレの荷物はここにあるしな。二人が荷物を持ってくるのを待ってるとしよう。
「らしくないじゃない」
隣に立ったカカシ先生に「そんなことない」と返した。でもカカシ先生は納得がいっていないようだ。
「カカシ先生」
「ん?どうかした?」
「二人から…特にサスケから目を離さないでください」
保険は多くかけた方がいい。帰ってきたサスケとサクラに向かって歩き、すれ違う際にカカシ先生は「任せとけ」と真面目な口調で言ってくれた。
継いだ意志を
(とても単純だけど、とても大切なこと)
prev /
next