星の瞬き | ナノ

  天地橋へ@


カカシの病室にてヤマトはカカシ、自来也、綱手、シズネよりカカシ班の隊長に任命された理由を説明される。

九尾の人柱力、うずまきナルセ。今回の任務のターゲットの一人でもある。


「九尾のチャクラは時としてナルセの体内から溢れ出し、妖狐を形どることがある。これを妖狐の衣と呼んでおる」


ヤマトは冷や汗を流しながら「妖狐の衣…」と繰り返した。

自来也は説明を続けた。ナルセの感情の高まりと共に九尾のチャクラが溢れ出し、全身を覆う。


「三年前のあの事件の時、ヤマト、お前は任務でいなかったな?」


自来也は過去に二度、死にかけたことがあるらしい。一度目は温泉で女風呂を覗こうとして綱手にやられたもの。……こればかりは自業自得だ。

そして二度目。あの事件の際だ。自来也の胸元には大きな傷痕があった。暴走したナルセを抑え込もうとした時に負った傷である。


「どうやって抑えたんですか?僕がいなかったのに…」

「…おそらくじゃが。ナルセは九尾をコントロールしている」


ヤマトははっと息を呑んだ。尾獣の中でも最も最悪だと言われ、今まで一度もコントロールされたことのない九尾が、だ。


「今回の任務、十分に気を付けろよ。いくらお前といえどナルセが暴れれば…」


怪我で済むはずがない。


*****


「前回の任務は見送れなかったけど、今度は違うね」

「気を付けて行って来るのよ?ナルセを見つけたらバーンと張り倒してやるんだってばね!」


正門で熱い見送りを受けるサスケはげんなりとしていた。


「(ナルセはしょっちゅうこんなものを…)」


優しい養父母達だ。適当にあしらうわけにもいかないし、かといってこれ以上足止めを食らうわけにはいかない。

隊長であるヤマトは見たことがない四代目夫婦の親バカぶりに唖然としながらも、えへんと咳払いをした。


「あの、四代目。そろそろ…」

「え?ああ、ごめんよ。それじゃあ…」

「では。カカシ班、これより出発する!」


四代目の見送りを背に四人は一歩踏み出した。



里を出発したカカシ班は天地橋を目指してひたすらに歩き続ける。だがピリピリとした空気が付きまとっていた。


「あのねぇ君達。班には信頼とチームワークが最も大切なんだよ。カカシさんに教わったはずだろう?あの偉大なカカシさんの班にいた君達が…なんだよそれ」


呆れつつ、だが怒りを込めてヤマトは言い放った。


「そうですよね。君達にとっての仲間はナルセくんですからね。木ノ葉を裏切り、大蛇丸の元へ走った、そんな大蛇丸なんかと同じようなゴミムシやろうが」


その言葉にサスケが拳を握り締めた。今にも殴りかかろうとしたところをサクラが手を出してサスケを制する。


「確かに大切なのは、チームワーク。サイ、あなたのことをまだよく知らないから嫌な雰囲気を作ってしまった。ごめんなさい、サスケくんのことは許してあげて」


ヤマトはまだマシな子がいたようだと安心した。「別になんとも思ってない」と言ったサイにサクラは良かったと微笑んだ。

ドカッ、と殴り飛ばす音が響く。


「私のことは、許さなくていいから」


え!?とヤマトは驚愕する。サイは口端から流れる血を拭った。サクラの顔は鬼のように怒りに満ち溢れていた。

穏便に事を治めようとしているように見えたサクラが、サイのことを殴り飛ばしたのだ。


「騙されたなぁ…君のさっきの作り笑い」

「あんたもナルセのこと何も知らないくせに、出しゃばったこと言ってんじゃないわよ。もう一度ナルセのことを悪く言ったら、手加減はしない」


サクラは脅迫のように拳を再び強く握る。サクラの声には激しい怒りが込められていた。

サイは笑いながらわかったと返事をする。


「しかし、作り笑いにもそんな使い方があるんだね。覚えておくよ」


厄介事をやり過ごすのは笑顔が一番。それが作り笑いだ。意外と皆騙される。


「そう本に書いてあった。ボクがやってもあまり効果はないみたいだね」

「【四柱牢の術】」


ヤマトの印と共に地面から木が生え、それが檻の形を作った。その光景に三人は顔を驚きの色に染める。


「君らねえ、これ以上もめるとほんとに檻にぶち込むよ?天地橋までもうあまり時間がない。って言っても、多少寄り道するだけの余裕はあるんだからね」


木遁の術。初代火影のみが使えたその術。この人は一体何者なのか、と知識が豊富な二人は疑問を抱く。


「ここで君らのまとめ役である僕からの提案なんだけど。君らの親睦を深めるために、檻の中に丸一日ぶち込まれるのと、温泉付きの宿場で一泊するのとどっちがいい?君ら僕のこともよく知らないだろ?僕は優しい接し方が好きなんだけど、恐怖による支配も、嫌いじゃないんだよねぇ」


その時のヤマトの表情は幽霊のようであった。


*****


結局ヤマト隊長の提案により温泉付きの宿で一泊することになった。


「へぇ…結構いいところね」


サクラが思わず声を上げる。落着きがあり、清潔な内装は宿の質を端的に表していた。


早速温泉に向かう四人。サクラは脱衣所で服を脱ぎ、温泉への扉を開く。そこにはもちろんながら先客がいた。

湯につかる前に体を洗う。そのためシャワーがあるところへ向かった。


「隣、失礼しますね」

「いえいえ、どうぞ」


先にいたくすんだ金髪の女性に声をかけ、自分もイスに腰かける。丁度自分と同じくらいの歳かな?と考えていると、シャンプーに伸ばした手が触れ合った。


「あ、すみません…」

「お気になさらず。そのシャンプー、なかなか良かったですよ」


やんわりと微笑んだ彼女に目が釘付けになる。金髪に青い瞳。三年前に別れてしまった彼女の面影と重なった。


「…何か?」

「あっ!すみません。知り合いに似ていたもので…」


女性は知り合いに似ていると聞いて首を傾げたが、すぐにまた微笑んだ。その仕草がさらに彼女を思い出させてしまい、胸をきゅっと締め付ける。


「(こんなところにいるわけないじゃない…)」


胸を締め付ける思いを仕舞い込み、体を洗い流す。


隣の女性と洗い終わった時間が同じになり、「一緒に露天風呂に行きませんか?」と誘われたので共に外に出ることになった。





「良いお湯ですね〜…」


かぽーんと効果音が付きそうになるくらい和む。サクラの長旅で疲れた体にはよく沁みた。


ちらり、と隣の女性を見る。自分よりも長い金の髪。並んで歩いてみると、身長は自分より5センチほど高かった。彼女が大きくなったらきっとこんな感じなんだろうなと思う。


「ヤマト隊長ー、サスケくーん、サーイ、湯加減はどうー?」


隣の男湯にいる三人に対し声を張り上げる。


「いい感じだよー。そっちはどうー?」

「もう最高ですー!」


返事をしてくれたのはヤマト隊長だった。本当にこの温泉は気持ちいい。持って入った手拭いで額の汗を拭う。

くすり、と隣の女性が笑った。


「お仲間ですか?仲が良いんですね」

「え?あー…、あははは」


笑われたことが恥ずかしくて苦笑いをする。あちゃー、女として今のはなかったな。


「任務でちょっと…。今日は新しいメンバーが増えたから親睦としてこの宿に泊まるんです」

「任務…忍者か何かですか?」

「いや、その…まあ」

「へぇ…いいですね。僕はもう一般人ですから」


褒めてもらえたことが純粋に嬉しくて、顔が赤くなる。のぼせたと勘違いしてくれるといいな。


「そういえばお名前はなんていうんですか?」


目の前の女性の名前を訊いていなかったことを思い出し尋ねる。


「桂イツキと言います」

「私は春野サクラです」


イツキさんはにっこりと笑った。どうぞよろしく、と告げられる。


「イツキさんはどうしてここに?」

「旅行です。ちょっと体を癒したくて…」


変ですかね?と苦笑した彼女にそんなことはない!と返した。

いいことを思いつき「そうだ!」と声を上げる。


「良ければ一緒にご飯を食べません?」

「いえ、そのただの通りすがりの僕に…」

「だいじょーぶですよ!皆優しいですから。さ、行きましょ!」


ざばりと湯から出て彼女の腕を引く。初めは狼狽えていた彼女も、脱衣所まで行けば観念したのか大人しくサクラについて行った。旅館特有の青い縦縞の浴衣を着て、女湯と書かれた暖簾を潜る。

サクラの泊まる部屋へと二人は向かった。




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