不平不満
今日の任務はこれでお終い。いやー、今日も疲れた疲れたと家路につく。なんとなく今日はまだ別れる気がしなくて班員全員で町をブラブラ歩いていた。
「お?どうした、お前達ももう上がりか?」
「あ、アスマ!」
久しぶりだ!と駆け寄ってその大きな胸に飛びつく。第七班も十班も、ナルセの突然の行動に目を剥いた。あのナルセが…!?と。
皆様々な感情を抱くが、その中で一番醜い男の嫉妬を見せたカカシがアスマの肩を叩いた。いつものようにニッコリと笑っているように見えるが、目は全く笑っていない。
「アスマ…どういうこと…?オレの班員なのにお前の方に懐いてるだなんて…」
「え、そりゃあ」
「ゆっくり聞かせてもらうからネ……良かったなお前ら!今日はアスマが焼肉奢ってくれるらしいぞ」
ハァ!?とアスマが答える間もなく下忍達はやったやったと騒ぎ出す。ザマアミロ、とカカシは嘲笑った。
第十班は任務終わりに必ずと言っていい程焼肉を食べるらしい。おかげで焼肉Qでは常連客。今日はお連れがたくさんですねと言った店員にアスマは青い顔で力なく笑い返した。
そんなアスマは今現在カカシと二者面談。既に青い顔からこれ以上血が引くと死んでしまうのではないか。哀れ、猿飛アスマ。
「おかわり!」
「あ、オレも!」
重ねられていく皿はナルセとチョウジにより消費されたものだ。よ、よく入る…とその皿の枚数を見た人は必ずそう思った。
肉の取り合いをナルセと繰り広げるチョウジはふと目立つ金の髪が目に入り、口にしていた。
「なんだかこうして見ると、いのじゃないけどナルセって女の子っぽいよね」
その言葉を聞いてナルセの箸が止まった。気を悪くしたならゴメン、とチョウジは謝った。
チョウジがこんなことを言い出したのも、ナルセが伸びた髪をそのまま放置していたせいだ。元々の顔立ちもある。中性的であるために今のナルセは男女どちらにも捉えられるかもしれない。
急に重苦しくなった空気にシカマルは何事かと片眉を上げた。
ナルセは黙ったまま日頃持ち歩いているクナイを取り出す。そのまま躊躇うことなく伸びた髪へと向けた。
「お楽しみのところすまんのォ。ちとこいつに用があっての」
いつの間にかクナイを向けていた腕を掴まれていた。誰だ、と顔を見ると最近よく会う自来也だった。力に差があるからナルセの腕はビクともしない。
じゃ借りてくぞ、とナルセは腕を掴まれたまま引き摺られていく。
もうすぐ日が完全に落ちる。自来也に連れられて公園の傍のベンチに座らされる。ナルセの視線は下に、自来也の視線はナルセの後ろ頭に。
「なぜ止めた」
「なァに。ワシは髪の長い女が好みなんでな」
ふざけるな、と言いたかった。これは三代目との約束だし、それを破る気はない。簡単に言ってくれるな。
「不自由過ぎるのもよくない。ちったぁ羽目を外しても良いだろうのォ」
「不自由にしたのはどこのどいつらだよ……」
「ああもう!可愛いげのないやつだのォ!子供は黙って大人の言う通りにして笑っとればいいんじゃ!」
ガシガシと頭を撫でられる。でもこれじゃあ引っ掻き回されているだけのようだ。目頭が熱くなったが、汁は零さないように気張った。
一番星はあの子
(自分からは望めない)
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