星の瞬き | ナノ

  見参したサポーターは


さらりと自分の名前を一筆する。欄は木ノ葉・保証人。


「これにて一件落着だな」


出来上がった書簡を眺めて満足気な笑みを一つ。机を挟んで向こう側に座ったじーさんも一緒に笑った。


この書類を以て漸く木ノ葉崩しは終わりを迎える。これは三代目火影、四代目風影、木ノ葉・砂の保証人による和解の証だ。

これがあるおかげで今回のことは痛み分けということになった。一方が一方の利益を追求してまたこじれないようにするために、これが一番いい形だった。


「じーさんが生きててよかったよ」


じゃなきゃこの書簡は出来上がらなかっただろうし。なにより


「ぶっつけ本番で成功するなんて思ってなかったし」

「あれは一か八かじゃったんか!?あんなに自信に溢れておったのに!?」

「あはは!ま、結果オーライ、ってことで」


そう、結果が大事なんだって。だからそんなに怒るなよ。細かいことは気にすんなって。


さて、あとはこの書類をホルダーに挟めば正式な証書として完成だ。対となるもう一方はすでに砂の里に送り届けた。

ぐるりと火影室を見回す。物は殆どなくて、がらんとしている。


「とうとうここともお別れじゃの……」

「長い間お疲れ様です、三代目様」


この仕事が終わった時点でじーさんは火影を引退する。長かったヒルゼンの時代も漸く幕を降ろした。


「これでやっと隠居出来るな」

「火影を引退しても働くぞ。まだまだ若いもんには負けられん!」


こんなに元気ならま、先のことは心配いらないだろう。歳だから疲労困憊で倒れることはあるかもしれないが。

「そういえば」とじーさんがさらに一枚の紙を取り出した。


「砂からもう一つ書状が届いとるんじゃが」

「えぇ〜、まだあったのぉ。もう勘弁。それはじーさんが何とかしろよ」

「わかった。わしが処理していいんじゃな」


お、今回はやけにあっさり引き下がるな。いつもオレに手伝わせようとするのにさ。ちょっと物の言い方が気になるが。


コンコン。その時控えめに執務室の扉がノックされた。じーさんが入るよう促す。


「失礼します。こちらにうずまきナルセさんがいらっしゃると伺って参りましたが…」


入室したのは黒髪の二十代の青年だった。あれ?なんだろ。腹のどこかがムカムカする。


「うずまきナルセは僕ですが」

「突然すみません。ボクは上忍のカナデと申します。少々お話よろしいでしょうか?」


構わないけど、と言いかけて口をつぐんだ。じーさんを見る。

さっきもう一つ書類があるって言ってたけど、本当にいいのだろうか。じーさんは一応病み上がりだ。それを任せたままにしておくのは、やはり少し気が引ける。


「構わぬ。はよう行ってこい」

「そうか…?」


じゃあお言葉に甘えて、と九喇嘛を連れて退室する。



*****

黒髪の好青年に先導されるまま、火影邸の屋上に出た。里を見下ろした光景は圧巻で、オレは中々この景色が好きだ。

さあ、本題に入ってもらおうと彼を見るが、本人はにこにこと笑ったままで口を開こうとしていない。

暫く時間を過ごす。話があると言ったのは彼なのに一体何なのだ。


「まだ気付かないの?」


クククと彼は喉を鳴らした。その時、やっとやつが何者なのか理解した。


「お前は!?」

「やあ、久し振りだね☆」


そのムカつく喋り方には覚えがある。そう、やつだった。オレが転生した時に出会ったムカつく厨二ヤロウだ。


「…通りで何か腹が立つと思った」
「相変わらず酷いね!!」


まったく…とやつは溜め息を吐く。そうしたいのはこっちの方だっての。

九喇嘛クンも久し振り、とオレの足元にいる相棒にも声をかけた。


「…確かにイラッとくるな」

「だろ?」

「君達ホントに質悪いよね!?」


いやてめェに言われたくねぇよ、と二人してふんぞり返る。


「それにしてもさっきのあれ何?君が『僕』って」

「仕事用だ。目上の人間に『オレ』なんて失礼だろうが。大体それを言うならお前もだろ。なんだあの気持ち悪いキャラ」

「気持ち悪いってねぇ…ボクのだって仕事用さ」


人間精神が成長すると表と素を使い分けちまう。だからこんな事態が起こっちゃうと。ややこしいなコリャ


さて、やつが用もなくオレに会いに来るわけがない。今度こそ本題に入ってもらうと腕組みをする。


「で、今度は何の用があって来た」

「サポートに来たんだよ。ここの担当はボクだからね」


力を取り戻し、これでオレはやっとミッションに向かうことが可能となった。だが、オレには知らないことがありすぎる。だからその手助けのためにやって来たらしい。

頼りなさそうに思えるのはオレだけなのだろうか。それを読み取ったのか、やつはいつかしたように咳払いを一つした。


「ボク達の使命についてとは何か、はわかってるよね?」

「まあ一応、な」


器が限界を迎えれば魂と器は分離される。そして魂の記憶は消去され、また巡る。その自然の流れを手助けすることが自分達、即ち死神と呼ばれる者の役目。

この役目は死神としての能力が目覚めた時点で能力の使い方と同じく、まるで最初から知っていたかのように脳内に入り込んでくる。


死神にはそれぞれ特有の、死神として最低限の仕事をこなす以外の力を持ってる。性格の個性なんかと同じで、力にも個性があるのだ。


「それにしても、君もまた結構な能力を手に入れたよね」

「ほんと。ただでさえ人間と比べるとチートな能力だってのにさ。まさか同族の中でもチートだとは思わなかったよ」


力には当然大小関係がある。たまたまオレはその中でも上位の力を手に入れた。はぁ…なんだか鬱だ…


忍としての知識、死神としての知識。ごちゃ混ぜになりそうでまた厄介だ。

そもそもあの時事故に巻き込まなければこんなことにはならなかった。オレが生きることにこんなにも苦労しなくてよかったし、生きるために対人関係で悩むこともなかった。

そこで「あ」と思い出した。


「ずっと聞きたいことがあったんだよ。お前、特典つけるとか言ってたよな?最強設定みたいなものは何となくわかったが、他に何か変ものつけてないよな?」


聞きたいのはそう、あのフラグ擬きのことだ。あのせいでこんなにも大変な思いをしている。やつの仕業だったなら容赦しねぇからな、と拳の準備をする。

だがやつはケロッとした顔で言ってのけた。


「ああ、あれ?嘘だよ」


…ん?何か今可笑しなものが聞こえた気がする。きっと幻聴だろうよ。うんうん、そうじゃないと困る。


「だ・か・ら、あれは嘘。君が最強設定だと思ってるものは君自身の能力のせいだから。ボクが君にしたことなんて君と九喇嘛クンの契約を結んだくらいだよ☆」


あの時はああ言った方が面白そうだったからね、とやつは言った。

ちょ、ちょっと待って…じゃあ今までのあれは一体……

オレの落胆具合を見てやつはどうしたのだと尋ねてきた。だから簡潔にこれまでのフラグのような出会いを説明してやった。サソリやイタチ、大蛇丸なんかとの出会い方とかが主な例だ。

説明を終えるとやつは「えーーっ!?」と大声を上げた。


「う、うっそーー!それを地で!?君って最高だよッ!!」


わはははと腹を抱えて爆笑するやつ。普通じゃあり得ない、漫画じゃないんだから、と。…うるせぇな。オレだって望んでこうしたんじゃねぇよ

睨みつけるとやつは口を抑えて笑いを堪えるような仕草をわざととった。


「ぷっ、くくくく……主人公体質でご愁傷様だけど、ミッションはちゃんとしてもらうからね……くく…」

「…わかってるよ」


とりあえずてめぇは一回笑いを抑えやがれ。最悪の再会じゃないかよ


異彩の音を奏でる
(ボクがわざわざああ言わなくても面白くなってたなんて!あははは!)
(黙れっつってんだろ)


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