彩りの音は消えた
オレにとって死という概念は別れという概念と同じような意味だ。
ただその別れは突然のものだし、長いものだ。たとえ再会できたとしても自分だけがその再会を理解できる。相手は自分のことを覚えていない。絶縁に等しいものだ。
だから他人の死などどうでもいいし、知り合いの死はとてつもなく悲しい。皆0からやり直せるのに、私はいつまでも0には戻れない。
自分だけが孤独なのだ。
霊安室はひんやりと冷たかった。それと同じくらい、カナデの体は冷たかった。
この前まで、ウザいくらい笑ってたってのに。やつだけがナルセという存在を理解してくれたのに。もうこのカナデの目が開くことはない。
長らく忘れていた絶望という感情が自身に襲いかかった。世界がモノクロのコントラストに包まれた。
「嘘つき…」
時計の針はまた止まった。
*****
葬式が行われた日は曇天だった。まるで自分の心の中を天気にしたようであった。晴れるわけでも、雨が降るわけでもないあの言いようのない濁りのある天気。オレの胸の内もまさにそうだった。
インナーもパーカーも、ズボンも靴も全て黒で統一した。黒以外は見たくなかった。
煙突からは一筋の煙が立ち上っている。カナデの体は灰になった。葬式には沢山の人が参列していた。あんなやつでも人望が厚かったことがわかる。
あいつを殺したのはオレ
なぜかそれがすっと胸に入り込んできて否定できなかった。あいつが死んで悲しいはずなのに。それなのに――
涙は出なかった。
鮮やかな色も消える
(声にならない悲鳴が木霊した)
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