星の瞬き | ナノ

  時代の移り変わりは


新しくチームを組み直したカカシ班は木ノ葉の里を出発した。

風影誘拐。つまり非常事態だ。とにかく急がなくては、とカカシ班は走り続ける。そんな中サクラはある人物の姿を見つけた。


「テマリさん!」


名前を呼ばれたテマリは振り返る。テマリの前に着地をした第七班は我愛羅が暁に連れ去られたことを告げた。

嫌な予感はしていたとテマリは思った。湯呑が割れるなんて不吉なこと、信じてはいないが嫌な感じはしていた。まさか弟が攫われたなどとは思わなかった。


「ここから砂まで二日半はかかるからな。急ごう」


カカシの言葉を合図に一向はさらにスピードを上げて砂へと走り出した。




走り続ける中サスケは何を思ったのか、枝を強く蹴った。サクラ達と距離が離れる。


「サスケ、少し落ち着け。そう熱くなるな。里を出る時自来也様にも言われただろう?」

「……気に食わない」


それは苛立ちを交えた口調だった。


「“暁”…イタチのいる組織、尾獣を狙う集団。……ナルセを狙うやつら」


その言葉にサクラとカカシがサスケを驚いた表情で見返した。なぜ二人がこんな表情をするのかテマリにはわからなった。


「テマリさん…ナルセって、覚えてますか?」

「当たり前だろう。私達の恩人だぞ」

「ナルセが……九尾の人柱力だ」


それはテマリを驚愕させるに十分な威力を持っていた。

木ノ葉と、砂とをつなぎ止めたナルセ。家族の絆を諭したナルセ。忘れるはずがない。その人が弟と同じ人柱力だとは……しかも九尾の。

九尾は尾獣の中で最も尾の数が多い。それゆえに尾獣の中でも別格と見られがちだ


「『オレと同じ器』……ナルセはよくそう言っていた。だから、オレにはそれだけで我愛羅を救い出す理由になる」


ナルセが言った。それだけでオレ達には必死になって助ける理由ができる。ただそれだけで。サスケはそう言った。


「(ここでも、また……)」


こいつらの中からあいつは消えない。そしてまた救ってくれるのだ。私を、私達を。


*****


「サソリのやつ、遅っせぇなぁ…」

「旦那のことだ。そう長くはかからねぇだろ…うん」


砂漠の中の岩場で待ち続けるけれど、中々サソリは追いついてこない。暇だよなぁ。デイダラの髪弄りも飽きた。


時間ならあるみたいだし、怪我の具合を診ることにするか。

まずは問題のなくなった腕、潰れてなくなった左腕から。これはもうどうしようもないな。義手になるだろう。

あとは気になる大きめの傷を治す。さほど時間も経ってないし、デイダラ自身で応急処置をしていたみたいだから化膿はしていないようだ。


「はい終了!」

「いってぇッ!!」


バシンと背を叩く音と同時に叫び声を上げるデイダラ。そんなに痛がるなら怪我するなよ。


「はァー、可愛くねェ悲鳴。可愛かったデイダラはどこに行ったの…」

「な!?可愛いとか言うんじゃねえ!…うん!」


顔を真っ赤にして反論しても意味ないだろ。やっぱ可愛いわ。


次は我愛羅。でも彼は人柱力だから傷が目立つということはない。少し大きめの傷を治しただけ。今は気を失っているだけだから。ゆっくりと丁寧に傷を治してやる。え?デイダラと態度が違うって?そりゃそうだろ。こっちはお偉いさまだぜ?

二人の治療を終えてほっと息をつく。わりと疲れてしまった。やっぱ医療忍者が欲しいなぁ。暁なんて所詮戦闘狂の集まりだし。別にカブトレベルを求めてるわけじゃ…嫌な顔思い出した。医療忍者募集しよ。


「遅せェぞ、サソリの旦那」


ん。サソリが到着ね。ナイスタイミーング。ごきりと肩を鳴らして立ち上がった。サソリとデイダラが何やら口論してるみたいだけど、オレは知らね。


「ま、追手も巻いたみてぇだし…行くか、うん」

「だな」


*****


「サスケくん」


移動を続ける中、サクラがサスケに声をかけた。その声はいつもの浮足立ったものではなく真面目なものだ。


「サスケくんが殺したかった男ってお兄さんなんでしょ?……“暁”の、一員の」


初めての里外任務、波の国で行った修行の時に聞いた“うちはイタチ”という名前。ナルセのことを調べ回っている間に見つけたサスケの兄の名。ずっとサクラの中で気にかかっていた。


「私もこの二年半、ただ修行だけしてたわけじゃない。綱手師匠の書斎に勝手に入り込んだり、外に出て調べるだけ調べた。大蛇丸の目的ってナルセの体なんでしょ?しかもあと半年しか時間がない…そしてその大蛇丸は元暁のメンバーの一人だった」


いつの間にここまで調べ上げていたのかとサスケは驚いた。もう隠しておくこともないかとサスケはあることを口にする。


「修行の旅の間、自来也から聞いた話だ……『ナルセは暁とつながっている』」


その言葉にサクラのみならずカカシ、テマリまでもが瞠目した。可能性ではない、断言する物言いだ。

だいたい暁は尾獣、つまり人柱力を狙っているのだ。それがつながっている、だって?解せないところもあるがしかし


「暁を追うも大蛇丸を追うも、どちらにしてもナルセに辿り着く」


そのためのタイムリミットは残り半年。その間にナルセに会わなければならない。そしてそこからナルセを引きずり出す。それこそが二人の目的だ。

サクラはある決意とともに拳を握り締めた。


「(今度は二人を、私が助ける!)」


*****


その後のことだ。第七班とテマリは砂嵐に遭遇したものの、砂の里に到着した。


「お待ちしておりました。テマリさんもご一緒でしたか。さぁ、こちらです!」


入り口で待機していた男に案内をされ、道中に説明を受ける。風影はやはり暁に連れ去られていた。そしてそれを追ったカンクロウが手傷を負った。

テマリは弟が二人も暁にやられたことに驚く。さらにはカンクロウは敵から毒を受け、解毒方法がわからずあと半日も持たないと。


「急ぎましょう、テマリさん。私が診ます!」


テマリの前に出たサクラは二年半前よりもたくましい顔つきとなっていた。


治療室に移動後、砂の上役チヨバアからカカシが勘違いから攻撃をされたり、サクラによる直接の毒抜きのおかげでカンクロウの毒がうまく抜き取れたりとした。

チヨが頑なに嫌がった他里の応援。それにより、たった今一人の人間の命が助かった。一昔前では考えられないような事態だ。


「姉ちゃんよ。時はゆっくり流れているでよ」


エビゾウはチヨに静かに告げるのであった。



サクラがカンクロウの体内に残留した毒の解毒薬を調合している最中、カンクロウより暁についての情報を聞き出すことになった。カンクロウが得た敵の一人の服の一部をカカシが口寄せした忍犬が追う。

赤砂のサソリ

チヨバアの孫であり、カンクロウに手傷を負わせた張本人。


「敵は全部で三人だ……一人は我愛羅を連れ去ったやつ。一人は赤砂のサソリ。もう一人は……何の情報もない」

「何も、か…」

「ああ、すまない。暁のコートを着用していなくて、狐の面をつけているとしか…」


「狐、ね…」カカシが呟くように言うと、その後それだけわかれば十分だと礼を述べた。


「弟を……頼む」


その翌日のこと、敵のアジトの判明後己の孫ということもあり、第七班はチヨバアを加えた四人で我愛羅救出へと向かった。


「可愛い孫を久しぶりに可愛がってやりたいんでのォ」


時に人を置いて行く
(時勢に流される)


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