星の瞬き | ナノ

  この決断こそがA


誰もが寝静まった真夜中、オレは荷物を詰め込んだリュックを背負い、月明かりだけが道標の暗い道を歩いていた。

一歩、また一歩と里の門に近付いて行く。耳元のピアスと後頭部の簪の房が歩く度に揺れる。


里の門へ続く道を進む中、人と出会った。サクラだった。おかしいな、サクラとここでこの時間に会うはずはないと思ったのにな。

サクラはこんな時間にオレと会ったことに困惑しているようであった。


「どしたの?こんなところで」

「昼のナルセ、様子がおかしかったから…ううん。今日だけじゃない…最近ずっと…」


女の子は人の気持ちに敏いよね、本当。

サクラはオレの背にあるリュックに目が行った。何と訊けばいいのかわからず、視線を泳がしている。


「ナルセこそ、こんな時間に何してるの…?」

「オレ?んー…散歩、かな?」

「嘘!じゃ、その背中のリュックは何なのよ!」


大声で叫ぶと人が来るよ、とやんわりと笑って注意する。しかしサクラにはその笑顔が自分を突き放すような冷たいものに見えた。じわりと涙が浮かぶ。


「サクラ、君はもう帰って寝な。今日会ったことは忘れるんだ」

「…なんで。ナルセっていつも一人で何か抱え込んでる……どうして私達を頼ってくれないの!?人には守れって言っておいて、なんでナルセのことは守らせてくれないの!?」


サクラはナルセに頼って欲しかった。ナルセは強かった。

でも、それは身体能力のことで、心が強いかと聞かれればわからないとしか答えられない。それだけナルセのことをよく知らなかったことを思い知らされるのだ。


ナルセはいつも里で孤独だった。それを見て見ぬ振りをした自分が許せなかった。ナルセは自分たちの知らない何かを抱え込んでいた。時折見せる悲しげな表情がそれを教えてくれた。


だからこそ自分に頼って欲しかった。ナルセはもう一人じゃない、一人で抱え込む必要はないと。


「行かないで!」


オレが一歩足を進めるのを見てサクラは叫んだ。サクラの目から涙が溢れる。体の向きはそのままで顔だけで振り向いた。


「サクラ、昼にオレが言ったことを忘れないで。サスケを支えて。大切なものを守って。それから、自分の望む世界を生きて」


それがオレの願いだ。サクラはまだ何か言いたげにくちをぱくぱく開閉させていた。瞬身でサクラの目の前に立つ。


「泣かないでよ」


そっと指で涙を拭うとサクラの体から力が抜け、その体は崩れ落ちた。彼女に幻術を使うのは気が引けた。けれど、そうしないと無茶をしてオレのことを追いかけるかもしれない。

オレってば身勝手で自己中心的なやつだ。思わず自嘲の笑みが零れる。サクラの体を受け止めて傍にあるベンチに横たわせた。


「……ごめんね」


*****


サクラの元を去り、里の門に到着する。門の上で待っていたのは一時間程前に会った音の四人衆。


「お待ちしておりました、ナルセ様…」

「…どういう風の吹き回しだ」


あ、原作サスケと同じようなことを言ってしまったな。でも仕方ないだろう。ついさっきあんな失礼な態度をとられ、夜会ったら遜られるなんて…。正直気持ち悪いぞ?

眉を顰めたオレが不愉快に思ったと勘違いしたのか、左近が静かに言う。


「里を抜けられた時をもってアナタは私共の頭になることに決まっておりました。今までの御無礼をお許し下さい」

「へぇ…まあいいや。……行くぞ」


これはいい機会なんだ。カナデを殺した無秩序を破壊するための。

見ていろ、カナデ。お前の言う通り、オレはオレの望むようにしてやる。そしてお前の望む世界を――


里に振り向いた。きっとこの光景をもう一度見ることになるのは当分先だ。それでいい。そう決心したのだから。

これは終わりで、始まりの一歩



きっと最善なのだと
(批判はさせない)


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