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 みじかいものまとめ。

77 アンドロイドとご飯
「あーん、してください」
「図々しいな、おい」
「しょうがないでしょう? 腕がないんですから」
「自業自得だ。俺のウマイ飯は食わせん」
「そんなあ」
「まあ、一口くらいくれてやらなくもない」
「やった! ご飯が食べられるアンドロイドでよかった。あなたのおいしいご飯がたべられる」
「うっせえ」
2014.06.25
76 心配
「ただいまー」
「おかえり、ってその腕!」
「あ、ごめんなさい。転んだら取れちゃって」
「取れちゃって、じゃない! 壊すな、は最優先事項だっていっただろ」
「とれちゃったもんはしょうがないです。明日には修理してもらえると思うんで」
「あったりまえだ! ったく、心配かけんな、バカ」
2014.06.25
75 願掛け
「初めまして。ボクはあなたを守るために作られたアンドロイド、Kと言います。ご命令を」
「『死ぬな』」
「アンドロイドに死という概念はありません。壊れるなということですか?」
「それでいい」
「メンテが必要になりますよ」
「いいんだ。それでお前が生きてるなら。頼むから、もう死なないでくれ」
2014.06.25
74 コールドスリープ
「100年待ってろ」
コールドスリープに入る前に一言だけ残して彼は眠った。残された僕は100年、ただ待ち続けた。また会えることを思えば、苦しくはない。
そして、彼の言った100年目がちょうど今日。
「初めまして」
彼の記憶は欠落していた。
やっぱり、ちょっと苦しいかもしれない。
2014.06.24
73 君とワルツ
「ワルツでも踊るか」
 放課後の誰もいない教室。
 吹奏楽部が演奏する三拍子の音楽を聴いて、彼は提案した。
「ワルツなんか踊れんよ」
「いいさ、適当にステップ踏んどけばいい。テキトーテキトー」
 机を少しずらして、二人で踊れるくらいの幅を作る。渋る俺の手をとって笑った。
「たまにはいいだろ?」
2014.06.23
72 授業中の幸せ
「ちょっと、手、貸せ」
 貸せ、というくせに問答無用で利き手を握られる。指を絡めて彼は笑った。
「どうしたんだよ、急に」
「いーからいーから。講義終わるまでこのまま」
 彼は筆箱を枕にしてすぐ眠ってしまった。起こさないようそっと手を机の上に置く。
 講義が終わるまで、このまま寝顔を眺めていよう。
2014.06.19
71 三堂のゆめうつつ
 夢なのか現なのか定かではない。
 唇に冷たい感触が伝わる。柔らかいから、きっと睦巳の唇だろう。泣いているのかもしれない。
 「大丈夫」と寝言のように呟けば、「大丈夫」と返ってきた。
 「どこにも行くなよ」と彼は言う。
 けれど、抱きしめたりせず口を塞いだまま。
 だから、「大丈夫」とまた抱きしめた。
三堂と睦巳のその後のはなし。
2014.06.19
70 睦巳の嫌な夢
 嫌な夢を見た。好きだ好きだと三堂が言った後、嫌いだと言って部屋を出ていく夢だ。
 何が起こったかわからず、冷たい部屋で泣きじゃくった。
 目が覚めて、夢でよかったと安堵する。
 三堂はいつまで一緒に居てくれるのだろうか。
 好きの気持ちが冷めてしまわないよう、口で蓋をした。
三堂と睦巳のその後のはなし。
2014.06.19
69 海
夜は溺れるように考え事をする。
海のようにどこまでも深く広く悩み、沈んでいく。
そのうち息ができなくなって、溺れる。
見なかったふり、聞かなかったふりをして、朝を待つのだ。
2014.06.15
68 愛故に
「なにをしてるの?」
「月を見ているのさ。今日は特別な月らしいから」
「あら、まんまるなお月様ね。何かいうことはないのかしら?」
「言うこと? ああ、『さようなら』かな」
「なにそれ、愛してるとかじゃないの?」
「愛してるさ。愛してるから、『さようなら』」
 愛おしい人ほど殺したくなるんだ。
2014.06.13
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