モンスターダーリン・続


「…っ…!」

ジェノスの唇が俺の唇にぶつかるようにくっついてきて、いきなりぬめったものが捩じ込まれる。それがジェノスの舌だと認識するより早く、長い舌が歯列を舐め上げて、ねっとりと舌に絡みついてくる。

「ふっ…、ぅ…っ」

人並みに恋愛はしたきたが、これまでは俺がキスやら何やらするにもリードしてきた(当然相手は女性だ!)から、ここまで執拗に口内を舐められた事はなく、しかもこんなねちゃねちゃと音の鳴る深いキスは初めてである。まるでAVのようだ、とやけに冷静な感想を持った。

「…ん!」

ジェノスの舌が俺の上顎や、舌の裏、下顎に這わされ、味わったことのない感覚に全身粟立つ。止めろという意味で、ジェノスの体をはがそうとするが、それも叶わない。
体格はあまり変わらないだろう。パワーが有り余っている年頃であろうが、それを差し引いても何故17歳やそこらの男子高校生に体育教師の俺が腕力で負けなければならないのだ。

「うー、うー」

ジェノスの力が思ったよりも強くて、俺が本気の力を出しても押し返せないことに驚いたが、今はそれが一番の問題じゃない。生徒、ましてや男にキスをされているというこの現状の方が最優先に解決すべき大問題なのである。
いささか焦ってきて首を振り身も捩りながら、必死に止めろとアピールしているとジェノスが唐突に唇をそっと離してきた。

「先生、舌、出してもらえます?」
「は…?」

俺の止めろアピールは全く伝わっていなかったようだ。俺は眉根に皺を寄せてジェノスをギロリと睨みつける。

「もうこんな事はもう止めろ。お前の性欲発散なんかに付き合ってられるか」

わざと吐き捨てるように言うが、ジェノスは怒る事はなく、逆にうっすらと微笑んでみせて俺の頬にキスをしてくる。ぶるっと言いようの無い恐怖が背筋を震わせた。

「センセイ、舌短いんですね。可愛い」
「…」

的を射ないジェノスの言葉に、俺は絶句し、思わずハア?と人相の悪い表情を浮かべてしまった。しかし、ジェノスは穏やかに微笑んで、俺の頬を愛おしげに撫でる。

「…先生は大きな勘違いをしています。もちろん溜まっているものを出したい、という気持ちはありますが、それだけじゃありませんよ。俺、潔癖症なんです。本当なら他人の粘膜に触るなんて、死んでも嫌です」

俺の口の中をべちゃべちゃにして、互いの唇周辺を涎まみれにした男が言う台詞じゃないだろう。

「何それ、ってことはお前童貞なの?そこまでイケメンで童貞とか(笑)」

人をこけにするような顔でプププと笑い、そこだけは勝ってる!と内心喜んでいると、ジェノスは苦しそうに表情を歪めた後、苦笑する。

「すみません。非常に心苦しいんですが、」
「ちっ」

ジェノスの言葉をぶったぎって、盛大に舌打ちしてやった。ああ、分かってたよ!やりたい盛り、しかもイケメンでジェノスが童貞な訳が無かったんだ!ああ、知ってたよ!!!この顔で奥手なんてちょっとカワイイとか思った自分がバカすぎる。

「まあ、抹消したい過去です」
「お前にも黒歴史があるんだな」

イケメンと俺の共通点を見つけ、少しだけ気分が明るくなる。

「ええ、中学生の時、家庭教師の女に襲われたなんて、トラウマ以外の何物でも、」
「それは羨ましすぎるだろぉぉぉお前ぇぇぇぇぇぇ」

俺は憤怒の形相で叫ぶ。顔を通り過ぎて髪の毛の生えていない頭皮まで真っ赤になっている事だろう。まるで茹で上がったタコのように、ってだれがタコだ馬鹿野郎!!

「なあAVの見過ぎなんだろ?それかエロ漫画とか…」

頼むそう言ってくれ、と縋るような気持ちでジェノスを見上げると、イケメン野郎は暫く俺を凝視した後、目を細めて苦笑する。

「まあ、その後社会的に抹殺してやりましたけれど」
「…」

ぐうの音も出ねえ。

「さあ、もう過去の話なんてどうでもいいでしょう?大事なのは今です」

俺が絶句していると、ジェノスが妙に明るい調子で切り出してくる。

「イマぁ?」
「ええ、俺は先生を心から愛してるんです。だから先生はこれから俺に抱かれるんです」
「だ、抱かれる、っておまっ!」

ジェノスは俺の言葉に、きょとんと首を傾げる。

「だって好きな人とセックスしたいって思うのは当たり前じゃないですか」
「〜〜〜っ!!まずっ俺の事を愛してるって時点で間違ってるだろ」
「そう、でしょうか」

ジェノスはまるで俺がおかしい事を言っているかのような不思議な表情を浮かべている。

「俺も、最初は驚きました…」
「ああ、そうだろうよ、こんなハゲ教師、」
「この俺が、人を好きになるなんて」
「ハア???」

ジェノスは悦に浸ったような顔で俺を見て、何故か舌なめずりをする。無意識にぶるりと体が震えた。

「ここまで恋焦がれる人は先生の他にいませんでした。こんなに触れたいって思う人も」
「まず男って時点で、一歩踏みとどまれよ!」
「そこは問題でしょうか?」

ジェノスは全く分かっていないという風な顔で、首を傾げている。

「しかもこんなハゲ教師!!」

自分で言っていて非常に情けないがっ!

「俺、先生の顔を見るだけで、声を聞くだけで、興奮してしまうんです。それが証拠です」

ほら、と言いながら俺の手を、自分の股間へ導いてスラックスの上から触らせたのだ。妙に熱く、硬く反っていたそこを思わず握りつぶしたくなったが、寸前で止める。

「誰を見ても、何を見ても、興奮する事は無かった。でも先生を見れば、俺はこんなにも簡単に欲情してしまうんです」
「…」
「認めざるを得ないでしょう?」
「盛大な勘違、」
「ではないと思いますよ。俺、先生と出会ってから、毎晩のように尻の穴にツッコまれてアへ顔晒しちゃう先生の顔を想像して抜いてましたから」
「っ!」

絶句、そしてまた絶句だ。俺はただ言葉にならずジェノスを見上げる事しか出来ない。

「男を想像して、普通シコると思います?自分で言うのもなんですが、言い寄ってくる女の子は沢山います。その子達をただ性欲のために食い散らかしたって良かったんです」

何自信満々に言ってやがる。俺はマジサイテー!と女子高生言葉を脳内で呟いていた。

「でも、初体験の時のトラウマもありましたし、それから極度の潔癖症になってしまって、他人に触れ、ましてや粘膜だなんて、想像するだけで吐き気がする程でした」

ジェノスは苦しげに吐き出す。

「初めてなんです!こんな気持ち…。だから先生…!」

ジェノスが視線を横に流した後、キッと俺を見詰めてきて、肩をがばりと掴まれる。

「だから先生、俺に抱かれて」
「…なんで俺が抱かれる側なんだ」
「俺は先生のアへ顔が見たいんです」
「…」

限りなく変態に近い野郎だ。

「先生は俺に突っ込まれてアンアン喘いで、俺に精液ぶっかけられるのが似合ってるんです」
「似合うかーーー!!!」

ジェノスのあまりに真剣な顔に思わず胸がキュンってしちまってほだされそうになったが、そこで現実に引き戻された。

「そうでしょうか、一度やってみたら分かるんじゃないですか?」
「そんな簡単にホイホイ男に体預けられるか!」
「もう俺無しじゃイケない体にしてあげますから」
「それもっとやだろうがぁぁぁぁ!」

必死に叫んでいると、いきなりジェノスが俺の唇に親指をかけ、強引に開かせてきた。

「むっ、」

噛んでやろうと思っていると、人差し指も口の中に突っ込まれ、舌先を摘ままれぐいと引っ張られてしまう。痛みと、口の閉まらぬ妙な感覚に涙が溢れてくる。

「先生がしてくれないなら、俺が舌を出してあげるまでの事です」

俺が涙目でジェノスを見上げると、薄く笑ってもっと舌が引っ張られる。抜けてしまうんじゃないかって心配になる程だ。

「いらい、いらいっ」

痛みに呻くと涎が垂れて、ジェノスの指にも伝う。するとジェノスは唐突に俺の舌を摘まんでいた指を離し、そのまま濡れた指先を口元に持っていってぺちゃぺちゃと舐め始める。色気を醸し出しながら、実に嬉しそうに。

「やっぱり、泣く姿も似合ってるじゃないですか」

俺がただ呆然と舌を出したまま、口を半開きにしていると、ジェノスが俺の乾いた舌に舌を絡めてきて、口の中に押し込まれた。

「ふぅ、っ…ん!」

時折甘噛みをしつつも、じゅるりと音が鳴る程強く吸われたり、歯茎の付け根まで舌先で撫でられて、痺れるような刺激が脳髄に伝わる。ろくに呼吸する事も出来ず酸欠で頭がくらくらして、俺はいつのまにかジェノスの体にすがりついていた。

「んぁ…、ぁ…、…」
「先生、俺の唾液飲んで」

舌先で奥を刺激されると、自然にごくんと喉が動いてしまい口の中にたまった唾液を飲み込んでしまう。

「先生、可愛い」
「んっ!」
「先生の口ちっちゃくてかわいい」

角度を変えるため唇が離る度に、うわ言のようにジェノスは呟く。

「この口に俺の精液飲ませたい」

俺がぶんぶんと顔を振ると、ようやくジェノスが離れた。俺達を繋げる唾液が猛烈に恥ずかしい。それを舌先でジェノスは舐め取り、そのまま恍惚とした顔でじっと見つめられる。俺は真っ赤になった顔を見られたくなくて下を向くが、有無も言わせず俺の両頬を掴み顔を上げさせられる。
マジマジと見られると、ジェノスがハアと耐えきれないと言った風に吐息を漏らす。

「先生今どんな顔してると思います?」
「…」
「欲情しきった顔してます」

それはお前だ!!と心の中で思うが、反論する暇を与えず、再び唇を重ねられ肩を押されてソファに押し倒された。

「ん…、んぅ」

覆いかぶさってくるジェノスが、ちゅっちゅっと音を鳴らしながら頭皮や頬、首筋、鎖骨にと辿るように口付けてくる。強引にシャツの裾をまさぐると両手が入り込んできて、たくし上げられ、腹やわき腹に手を這わされる。

「っあ!」

ふいに指先が胸の突起に触れ唐突に押されると声が出てしまう。

「ちょ、やめ」

ジェノスの体をどかせようとしても、無駄な足掻きだと分かっていたが、抵抗せずにはいられない。その間も、ジェノスの長い指が、俺の乳首を摘まんだり親指で転がしたりと弄ってくる。しかも強弱を付けて器用に刺激してくるものだから、全身が粟立ってしまう。

「んっ、…く…、」
「尖ってきた」

嬉しそうに耳元で囁かれると顔が熱くなる。ぞわぞわとした感覚が体中を走り、自分でも思ってもみない声が出てしまうし、ジェノスの指で反応してしまっている事がとても恥ずかしかった。

「先生、気持ち良いんですか?」
「っ…、し、知らねえ!」
「じゃあ、これは?」

唐突にぎゅっと強く摘ままれ、爪を立てられる。

「いっ!」

突然の痛みにびくっと背中をのけ反らせると、片方は爪を立てられたままもう片方はぬるりと熱い唇に包まれる。

「や、め、いたい、じぇの、す」
「…痛い?でも先生ってMの気質あると思いますよ?」

クスクス楽しげに笑いながら股間をそっと触られて、顔が赤くなる。そこはジェノスの言う通り既に立ち上がり始めていた。

「先生痛い方が好きなんじゃないですか?」
「…っ!ち、違…」
「今まで気付いていなかったんですね。ああ本当に良かった。まっさらな先生の体を開発出来て俺嬉しいです」

じっくりと、ゆっくりと気持ち良くしてあげますね。嬉しそうにジェノスが耳元で囁くと、俺に圧しかかりながらスラックスを剥ぎ取り、着ていたTシャツも脱がされる。

「ちょ、やめ、」
「大丈夫です」

唐突に下着だけを纏わせた体が晒されて、強烈な羞恥が襲う。しかも股間は先ほどの刺激で膨らんでいるのだ。俺はジェノスの胸に手を突っぱねたり足をバタつかせたりして必死で抵抗する。

「先生、抵抗しないで」

優しく俺に囁いてきて、耳をねっとりと舐め上げられる。

「ん、」
「可愛いです」

ぴちゃぴちゃ耳を舐められたり穴に舌先を差し込まれると身が竦んでしまう。その隙にジェノスはいつの間にか俺の下着すらも剥ぎ取ってしまった。

「ジェノ、ス、止めろ!」
「ここまで来て止められるわけないでしょう?」

ジェノスは俺の両足を掴んで持ち上げる。ぐっと力を籠められると、膝が胸に押し付けられ、大きく足を開かされていた。あまりの恥ずかしい体勢に、顔が赤くなる。

「可愛い」

ハアと興奮しきったような吐息を漏らして、ジェノスはうっとりと俺の股間を見下ろしている。ひっと自然喉がひくついた。太ももを撫でられて、慌てて足を閉じようとしても、更に強い力で開かされる。
少しだけ立ち上がった性器も、尻の穴さえもじっくり見られて、羞恥のあまり死にそうだった。

「や、めろっ」

涙が溢れてしまいそうなのもを死にこらえるために、きゅっと目を閉じた。こんな屈辱耐えられるはずもない。

「……っ!」
「センセイ」

ぐいっと乱暴に片方の膝を押し上げられる。もう片方の手が、太ももからツウと伝い流れ、性器へと辿りつく。睾丸を触られて思わずびくっと腰が震えた。

「やめっ」
「ここ舐めしゃぶりたいんですが、先生怒ります?」
「舐めっ、…?だ、ダメだ!」

思わず瞼を開けてしまい、愕然とした顔でジェノスを見下ろすと、ばちりと目が合いうっとりと微笑まれる。ついでに舌なめずりされた。嫌な予感しかしない。
俺が恐怖でひくんと喉を鳴らして固まっていると、ジェノスがいきなり睾丸を軽く揉んでできて、しかも親指で穴の近くを撫でてきて、盛大に戦慄いてしまう。





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