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 「ゼロス……いないんですか?」

肩すかしをくらうとはこういうことではないだろうか。
辿りついた屋敷の前でのセバスチャンの言葉に、リンネは口元がひきつりそうになるのを必死に耐える。
セバスチャンの話だと今は仕事で屋敷をあけており、何時に戻るかも分からないらしい。

「何か急ぎの御用でしょうか?」

「あ、いや……急ぎという事ではないので、また今度来ます」

首を横に振り、リンネは短く挨拶をすませると踵を返して来た道を戻り始めた。
貴族街を抜けると口から零れたのは大きな溜息。
自分でも驚くくらいに落胆していることに気付き、リンネは首を振って前を向いて歩きだした。
ゼロスの立場を考えれば、忙しいのは容易に想像できたはずだ。
そう自分に言い聞かせて、街灯の灯り始めた道を一人で歩く。
宿屋に帰ろうかとも思ったが、どうもそういう気分になれない。
 こうなったら一度シルヴァラントに戻るべきだろうか。
考えてみれば、ダイクにもパルマコスタに暫く滞在するとは言ったが、メルトキオに行くとは言ってない。
余計な心配をかける前に一度家に帰って近況報告もした方がいいだろう。
世界は統合され、四千年前と同じ地形になっている。
とすれば、ここから南東に飛べばイセリアがある大陸が見えてくるはずだ。
リンネは早速帰宅の準備をしようと道具屋に向かい、必要なものをそろえるとメルトキオを出た。





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