「長く待たせてすまない」

そう言って通されたのは、鉄や金属で囲まれた、無機質な部屋。
部屋の中央に大きなケースがある以外、何もない。
部屋の上にはここの状態が見渡せる別室があって、三人ほど人が立っているが、ライトの逆光があって見えないようになっている。

「さて、ようこそ……人類最後の砦『フェンリル』へ。今から対アラガミ討伐部隊『ゴッドイーター』の適性試験を始める。少しリラックスしたまえ。その方がいい結果が出やすい」

ーーーそう言われてリラックスできる奴がいるかよ。
そう、私は心の中で悪態をついた。

「心の準備ができたら、中央のケースの前に立ってくれ」

ーーーはいはいわかりましたよ。
アナウンスの指示通り、私はケースの前まで行き、置いてある武器を手に取った。
機械ならではの、ヒヤリとした感覚が伝わってくる。
数秒後、私の手を残したまま、ケースは閉まった。
急いで引き抜こうとするが、ケースはピッタリと固定されていて、ビクリとも動かない。
最初、ケースについている窪みは何なのだろうと思っていたが、ケースを閉めたときに腕だけがケースの中に残されるようにするためだったのだろう。
あのときもっと考えていればよかった。
今となってはもう後の祭りだが。
すると、ケースの中からは何かの音が聞こえてきた。
何の音だろうと考えようとした瞬間、私の腕を伝って、鋭い痛みが走った。

「…ぅ…ぁあああぁあ……ぁぁあ………っ!」

痛い。
痛い痛い痛い。
すぐにでもケースから手を引き抜きたい。
でもできない。
ケースがそうさせてくれない。
私がしばらく痛みに耐えていると、ケースが開いた。
ぎゅっと瞑っていた目をおそるおそる開けてみると、ケースの中にあった私の手には、見慣れない赤い腕輪。
その腕輪からは、黒い煙が出ている。
わけがわからず、とりあえず掴んでいた武器を持つと、案外すんなりと持てた。
見た目の割りに、質量はそれほどでもないらしい。

「おめでとう、君がこの支部初の『新型』ゴッドイーターだ」
「…………………………っ!?」
「適性試験はこれで終了だ。次は適合後のメディカルチェックが予定されている。始まるまでその扉の向こうの部屋で待機してくれたまえ。気分が悪いなどの症状がある場合はすぐに申し出るように」

こちらとしては、気分よりも機嫌が悪いのだが。

「期待しているよ」

そのアナウンスを最後に、私は無機質な部屋を出た。
ーーーここから、私、フィニリオン・ラティウスの人生は、大きく変わることになる。
*<<>>
TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -