「狙いを定めて………アターック!」
そう叫びながら、新人ゴッドイーターのアスティは駆け出した。
目標はもちろん………。
「ソーマっさーん!今日こそは任務に連れてってもらいますよー!?」
アスティの所属する、第一部隊のメンバー、ソーマだった。
アナグラ内のエントランスで堂々とソーマに後ろから抱きつくアスティだったが、毎回恒例のことなので、特に気にする人物はいない。
それどころか、その二人のやり取りを見て「仲が良いなあ」と暖かい目で見守る人物もいる。
当のソーマは、任務の受注中に邪魔されたことと、後ろから抱きつかれたことによって首が絞まっていることと、暖かい視線のなかに混ざっているニヤついた視線に対して、キレる寸前だが。
「あ、ヒバリさーん!その任務、私もメンバー追加で!」
「ふざけるな。誰が……」
「わかりました。アスティさんも追加しておきますね」
「おい、勝手に追加するな。俺一人で行く」
ソーマがアスティの手を振り払って一人で行こうとするが、アスティは素早くソーマの前に回り込んだ。
アスティは小柄なのを利用して、よく人の回りをうろちょろする。しかも、本気で怒る前に逃げ出すので、ソーマの怒りはいつも不完全燃焼だ。
「ふふ、メンバー登録はもう終わりましたからね。昨日、次のソーマさんの任務の受注の時に足止めしてくれって、ヒバリさんに頼んだかいがありました!」
お前のせいか。
ソーマは心のなかでそうツッコんだが、口には出さないでおいた。
ここで口に出してしまったら、アスティの熱はさらにヒートアップし、しばらくは離してくれなくなるだろう。
それは困る。
「私、もっと強くなりたいんですよ!強くなって、トウヤさんを殺したアラガミを探し出したいんです!」
トウヤさん、というのは、昔孤児だったアスティを、ここまで育ててくれた人の名前だ。
いつもトウヤさんと呼んでいたので、名字は忘れてしまった。
人とはちょっと変わった性格のせいで遠巻きにされていた彼女に、唯一優しく接して人。
その人物が8年前、アラガミに喰い殺されてしまった。
アスティを遠巻きにしていた、孤児たちを庇って。
「………お前は、そのアラガミを見つけてどうするつもりだ。第一、どのアラガミかもわからないだろ」
「トウヤさんの傷口には、数ミリ程度のグボロ・グボロのはの欠片が見つかりました!ですから、グボロ・グボロを片っ端から倒していけば!」
「そうかよ。なら、せいぜいそうやって生き急ぐことだな。今のお前の行動は、早死にする奴等の典型的なパターンだ」
ソーマはそう言って、アスティを無視して出撃ゲートへと足を運ぶ。
さすがに、これほど突き放した物言いをすれば、彼女はもうついてこないだろう。
ただでさえ難関な任務だ。
そんなところに新人をつれていくなんて、狼の前に羊を放り出すようなものだった。
が、
「って、そんなキツイ物言いをしたところで、私が諦めると思いましたかソーマさん!私の長所は粘り強いところですよ!さーて、討伐対象のコンゴウ三体はソーマさんに任せて、私は支援と近くのオウガテイルとかその他もろもろ相手してますので!」
では!と言って、アスティはターミナルに向かって出撃ゲートに向かって走り出した。
回復アイテムも神器の調整も、とっくの前に準備は終わっている。
あとは出撃するだけだ。
「………調子のいいやつ」
これにはソーマも諦めたようだ。
いくら突き放しても、彼女は追いかけてくる。
もっと難関な任務の時に邪魔されるよりは、今一緒に行ったほうがよっぽどマシだ。
「……………………クソッタレ」
"死神"と恐れられている彼の口元がわずかに緩んでいたことは、誰も知らない。
どこまでも
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