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「ああもう、ミクリオのバーカ!」

今この場にいない天族の文句を言いながら、リズは一人遺跡を歩いていた。
災禍の顕主に敗れたスレイとリズは、ロゼと共に崖の下へと落ち、この遺跡、風の骨のアジトの近くへと流されたらしい。
リズの内にいるアリアはリズよりも力が弱く、リズが表に出ているときは何もできない。記憶さえないと言う。
文句を言っても何も返ってこないなか、数時間近く遺跡内をブラブラしていると、見覚えのある人物を発見した。

「あっれー?こんなとこで何やってんですかぁ?デゼル」

壁に寄りかかりながら立っていたデゼルは、リズの姿を見た瞬間舌打ちをする。
デゼルの態度を笑顔でスルーすると、リズも同じく壁に寄りかかった。

「…おい、あの娘はどうした」
「アリアは長期休暇中ー。ってか、デゼルこそなんでこんな場所に一人で。まさか、あのロゼって子に気が」
「うぜぇ」

ひどーい、と軽口を叩く少女を横目に、ふとデゼルは考える。
この、天族でも人間でもない少女は一体何者なのだろうか。
聞いてみたところ、天族と人間のハーフなどではないと言う。
だが、肉体は人間だし、使う力は明らかに天響術だ。
天族と人間のハーフでこのような形になってしまった者は、デゼルは何度か見たことがある。
だが、ハーフでもないのに人間が天響術を使うなど、今まで見たこともなかった。これは一体どういうことだ。

「…………………………あ」

リズの声で、ふと我に返る。目の前には、導師スレイの姿。

「デゼル、色々と聞きたいことがあるんだ」
「フッ。奇遇だな。俺も聞きたいことがある」

デゼルが聞いたのは、主に二つのことだった。
スレイが使う神衣についてと、ロゼが神衣を発動できる可能性。
神衣は、導師と天族が力を合わせて使う技。そのため、手に入れるという類いのものではない。
そしてロゼは、導師に匹敵するほどの霊応力を持ち合わせている。彼女なら、従士になりさえすれば神衣を使えるかもしれない。
だが、ロゼは天族を拒絶している。かなりの霊応力を持っているのに天族が見えていないのは、そのせいだ。
このままでは、彼女は一生神衣を使えない。
それだけ聞くと、デゼルはどこかへ行ってしまった。

「……で、リズはどうする?一緒に来る?」
「あ、行く行く。どーせ、このあとは遺跡の探索なんでしょ?ちょっと気になってたんだよねー」

いつもと変わらない様子で話しかけてくる少女に、ちょっと驚いた。
たった数時間でここまで態度が変わるとは。
この調子なら、すぐにでもまたアリアについて話せるかもしれない。

「あ、でも、ミクリオは近づかないでね。遠慮なく攻撃するから」

前言撤回。先は長そうだ。




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