プロローグ


ピッ…ピッ…と機械音の鳴り響く部屋に、アリアは寝っ転がっていた。
書類や資料の散乱する部屋は、どう考えても寝心地が良いとは思えない。
そんな部屋に、一人の男が入ってきた。

「おいアリア!お前はどう思う!?」

眼鏡をかけた男は恐らく、研究員か何かだろう。

「うるさいな……人の安眠妨害はこれ以降禁止ってことで」

上体を起こしたアリアは、眠たそうに目を擦りながら言う。

「なんだっけ……"人間を強制的に天族と同調させる実験"?そんなこと、あたしの知ったことじゃない。
やりたければ勝手にやれば?あたしにとってはどうでもいいことなんだし」
「強制的に、じゃない。"半"強制的に、だ。
それで、実験には当然、実験体となる天族と人間が必要になってくる。
だけど、我々は人間。天俗の姿は見えない。
そこで、人間でありながら天族の姿が見える君に、捕獲を頼みたいんだよ」

アリアに拒否されても、研究員は引く様子はない。

「………めんどくさ。それで、あたしに何をしろって?」

アリアがそう言うと、研究員は少しホッとする。そして次に、

「まずは、イズチという場所に向かってほしいんだ」

と言った。

「イズチというのは、天族のみが暮らす場所に一つだ。まずはそこで、天族を一体捕獲してきてほしい。
なるべく若い方がいいかな。実験の痛みに耐えられる確率が上がるし。あと、できれば人間も」
「あっそ」

「もしあたしが負けても、それはあたしのせいではなく、やれって言ったお前のせい。
あたしが負けたときのことを考えておくことをオススメする」
「まさか。アリアが負けるなんて」
「天族の強さを甘くみない方がいい。これは、一度天族と戦ったことのあるあたしからの忠告。
姿も見えないやつなんか、簡単に瞬殺できる」
「……………………………………………」

アリアが珍しく自分の意見を言ったことに腹が立ったのか、研究員はしばらくアリアを睨み付け、

「…行くならさっさとしてくれ」

と言った。

「…めんどいな」

アリアは居場所のないこの研究所から逃げるように、イズチへと旅立った。




これが、世界を知る前の、アリアだった。

 





|

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -