4 ―がんじがらめの現状 「愛してる」 幸せな魔法の言葉。不幸な呪いの言葉。それは呪縛のようで…。 ザンザスはその言葉が苦手だ。 「愛してるぜぇ」 お前はいとも簡単に言ってしまう。 しかし、悪い気持ちはしない。もっと言って欲しい、もっと自分のことばかりになってほしい。 (そんな恥ずかしいこと、俺が言ったりできるわけはないけれど) 母や養父の言葉とは違う、愛するお前の言葉は甘く響き渡って仕方がない。 もっと、もっとと強請りたくなる。 ギュッと抱きしめた細い女の体は柔らかく、その冷たい髪や目の色からは思いがけない程暖かい。 「スクアーロ…」 形の良い耳元で名を呼ぶと、ピクリと体が震え俺の背に回した細い腕に少し力が入った。 (今、きっと俺は幸せだ。) じんわりと柔らかく胸に広がる暖かい感情を最近知った。 戸惑い、惨めな気持ちになったこともある。そのたびにこの女に暴力を振るってしまった。 「スクアーロ」 再び名を呼ぶ。 蒼銀の目が見開いた。消える様な声で発した言葉は、届いたか。 (愛してる) [mokuji] [しおりを挟む] TOP |