小説 | ナノ







―がんじがらめの現状



「愛してる」


幸せな魔法の言葉。不幸な呪いの言葉。それは呪縛のようで…。
ザンザスはその言葉が苦手だ。


「愛してるぜぇ」


お前はいとも簡単に言ってしまう。
しかし、悪い気持ちはしない。もっと言って欲しい、もっと自分のことばかりになってほしい。


(そんな恥ずかしいこと、俺が言ったりできるわけはないけれど)


母や養父の言葉とは違う、愛するお前の言葉は甘く響き渡って仕方がない。
もっと、もっとと強請りたくなる。



ギュッと抱きしめた細い女の体は柔らかく、その冷たい髪や目の色からは思いがけない程暖かい。


「スクアーロ…」


形の良い耳元で名を呼ぶと、ピクリと体が震え俺の背に回した細い腕に少し力が入った。



(今、きっと俺は幸せだ。)



じんわりと柔らかく胸に広がる暖かい感情を最近知った。
戸惑い、惨めな気持ちになったこともある。そのたびにこの女に暴力を振るってしまった。


「スクアーロ」


再び名を呼ぶ。


蒼銀の目が見開いた。消える様な声で発した言葉は、届いたか。



(愛してる)


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