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「っぅ・・・・ん・・・・・・・」


息苦しさに目を開けると、まず見えたものは濃紅のベッドの天蓋だった。
ズキンっと肩が痛んだが、ダメージの残る重たい身をよじり起き上がろうとする。


が。


痛めて体が動かないのかと思いきや腹の上には逞しく、古傷の浮かんだ男の左腕が乗っていた。

(重たいはずだぁ・・・)


起き上がるのを諦めて、男の方へ体の向きを変えた。
すぅーっと寝息が微かに聞こえる。


漆黒の前髪が鼻筋にかかり、その寝顔は普段よりも幾分か幼い。
長い睫毛が影を作り、表情が悲しげに見えた。


「・・・なんかあったのかぁ・・・?」


眠るザンザスに、ポツリと独り言のように囁く。


リング争奪戦から5年が経ち、悲しいことも憤ることもたくさんあった。
淡々と進む沢田綱吉の10代目就任等、悲しいも憤りも通り越してただ呆然となったりもした。
時折癇癪を起こすザンザスも、以前よりは大人しくなっただろう。
いや、大人になったのだ。


5年前、彼は子供だった。
揺りかごから目覚めた時にはまだ彼は16歳で、いきなり戸籍や体は24歳です。と言われても混乱するばかりだろう。
彼は、成長したスクアーロを恐れていた。

元々、ザンザスは賢い。
自身の記憶から急激に姿かたちが変わった者など本能で信用ができない。
状況が理解できればできるほどに恐ろしい、何か別のものにでもなったかのようで不安心から彼女を虐げた。



「・・・ごめんなぁ・・・」


血色の悪い、白い右手でザンザスの頬にそっと触れた。

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