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「ザンザス様、このような場所へ…どうされたのですか?」
柔らかい物腰の、だが隙のない壮年の男が近寄ってきた。

周りを森に囲まれたボンゴレ本邸の敷地内にひっそりとヴァリアーの屋敷があった。
正直、今までこの屋敷は避けていたためあまり訪れたことはない。
ボンゴレの跡取りとして、それ自体が裏の世界とはいえ華やかな表舞台にいる自分には裏の深い闇のようなこの部隊には興味がなかった。
しかしザンザス自らこの屋敷に訪れたのは、剣帝と呼ばれるこの男テュールに重要な命令があったためだ。


「ご用は何でしょうか。」
テュールがザンザスの前に跪く。この男は歳の割に背が高く、成長期のザンザスよりも頭が高い位置にある。主を見下ろさぬようにいつも近付く時には跪いていた。

「あのガキ…スクアーロと闘え。あいつをヴァリアーに入隊させる。あいつはお前と闘わせないと入隊しないと抜かした。」
先日ワザとではないが悪戯をしてしまったような罪悪感もあり、銀の少年のおねだりを聞いてやろうと思った。
しかし、テュールは険しい表情をした。

「不都合でも?」

テュールが何に引っかかっているのか分からず、ザンザスはそう言った。


少しの沈黙の後、テュールが口を開いた。
「ザンザス様がお望みならば。お受けしましょう。…しかし……」どうも歯切れが悪い。

「?…あんなガキ、大したことないだろう?アイツの納得いくように闘えばいい」

「ザンザス様…ザンザス様はお気付きではないのですか?」

「?」
何にだ。と眉間に皺をよせる。
「あの子…スクアーロは女の子です。年端のいかぬ少女と暗殺業のプロの私が闘うのはいかがなものかと」

この男はスクアーロを少女、と言った。
まさか。どうみても貧相な少年…しかし覚えがないわけでもない。先日の自身の行動のこともある。
ザンザスは足早にヴァリアーの屋敷を後にした。


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