小説 | ナノ




27



「デート?」

ザンザスから発された声は心なしかいつもより低く、スクアーロは反射的に強張った。

「えーと…その…」



ザンザスの赤い瞳がスクアーロを射抜かんばかりに睨んでいる。
ザンザスは、わけのわからない苛立ちがジワジワと鳩尾に溜まるような感じがして眉間のシワを深めた。



「ザンザス、威嚇するな」



セコンドが煙を吐き出しながらザンザスを窘める。灰皿に煙草を押し付けて火を消すと足を組んで座り直し、不服そうなザンザスが口を開く前に次の言葉を発した。


「彼女は私が気に入っていて連れて来た。」

「…伯父上、コイツは」

「お前の店の子…か?」

「知ってて?」

「勿論」


ニッコリと口だけで笑ったセコンドをザンザスが無言で睨んだ。スクアーロは二人をキョロキョロと交互に見ることしか出来ず、ソファの上で小さくなる。


「隣いいかな」

「…あ、はい」


すっかり2人に取り合ってもらえなくなった金髪の青年がスクアーロに話しかけて隣に腰を降ろした。


「顔色悪いけど、大丈夫?」

「あ…あぁ。大丈夫だぁ」

ニコニコと胡散臭い程の笑顔を貼り付けた青年を前に、スクアーロは座り心地の悪さを感じた。

「俺はディーノ、ザンザス達の遠い親戚だよ。君の名前は?ずいぶんとセコンド伯父様に気に入られてるんだね。…ザンザスにも。」

「名前はスクアーロ。…気に入られてるなんて、気のせいじゃないかぁ?」

「そうかな…彼らはモノに対する執着があまりないんだよ。」


(…モノ…)



自分の表情が強張ったのを感じた。それを察したのか、ディーノが謝る。

「あっ、ごめん。モノってそういうことじゃなくて…」




「おい、スクアーロ。帰るぞ」
「えっ…?」


突然ソファの背に手が伸びてきて、ザンザスが2人の間に割って入った。


「おや、もう帰るのか。パーティーはこれからなのに…。」


セコンドが足を組み替えながらザンザスに言い掛けるが、強引にスクアーロの腕を掴むと、立ち上がらせた時の衝撃でガシャンっとテーブルから床に落ちるカップに目もくれず部屋を出て行った。



乱暴に音を立てて閉まった扉に、ディーノが息を吐く。

「…意地悪も程々にしないと、構って貰えなくなりますよ」


「意地悪のつもりはないさ。…まあ、言うなれば色んな偶然が重なったのさ。綺麗な言い方をすれば運命とでも?」






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