小説 | ナノ








ツー、ツー、と受話器から断続的に音が鳴る。


ザンザスの脳裏にはディーノの満足げな顔が浮かんだ。

『あの子は優男のようでいて狡賢い』

少し前に誰かが言っていた。





(何が目的だ…?)



爽やかな風が吹き、後頭部を撫でてゾワリとくすぐったいような寒気のような、心地の悪い気がした。



舌打ちをひとつすると 、玄関に向かいながら車を手配させディーノの邸宅へと向かった。









「…んだぁ、これ」

目が覚めると、スクアーロの目の前には大きなテディベアが鎮座しており、学校の屋上で眠ったハズの記憶を必死で呼び起こした。


「…まさかまだ夢の中かぁ?ファンシーだなぁ。」


まだ朦朧としている意識の中でそう呟いたが、我に返って飛び起きた。


「っんなわけねぇ!」


起きた反動でヒラリ、と視界に翻った薄いピンクの布がパサリと太ももに落ちた。


「?」




「やぁ!起きた?…それなかなか似合ってるよ。」


聞き覚えのある声の主を見ると、スクアーロの体を指差して微笑んでいた。


「へなちょこ!?…ここどこだぁっ…、それに……は…」


指された方を見ると、レースやリボンがふんだんにあしらわれた薄いピンクの布が。


「なんだこれっっ…」


あろうことか、その肌が透ける程に薄い布は男子の制服を着込んでいたはずのスクアーロの痩身を包んでいた。




「あ、着替えはメイドにさせたから大丈夫だよ」


にっこりと微笑むディーノを前に、状況が理解できずただ音もなく口をパクパクとさせるしかなかった。





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