小説 | ナノ




16


2度目の零地点突破、2度目の敗北。

スクアーロは目の前の出来事に固く瞼を閉じた。山本との戦いの傷や鮫に襲われた傷による自身の体の痛みより何より、目の前のザンザスを見るのがツラい。もう、そんな姿は見たくなかったのに。


病院の白いベッドに全身包帯に巻かれた傷だらけの主が眠る。もし目が覚めなかったら…と思うと不安で、スクアーロはずっと側にいた。


「ごめん…ごめんなあっ…ザンザス…。俺が、…もっと頑張れたら…」


この言葉は何度目だろう。後悔はしたくないと思っていたのに、いつまで経っても弱いままだ。スクアーロは込み上げる涙を隠すように、ベッドに突っ伏した。

「カス鮫…、誰がお前のせいだと言った?」


頭上から普段よりも幾分か弱いがハッキリとした口調で聞こえたザンザスの言葉に、スクアーロは顔を上げた。

「お前っ、目が覚め…」

「ふん…カスがメソメソ鬱陶しいから目が覚めた。…お前は変な所で女々しいな。」

「ぐすっ…うるせぇっ」


「…仕方ねぇヤツ。俺の前でメソメソしてるヤツなんてお前くらいだ」

大きな手が頭をそっと撫でた。

なんだかザンザスが別人のように優しい。

「…ザンザス、どっか頭でもぶつけたのかあ??」


涙を入院着の袖で拭いながらそう言うと、頭を撫でていた手がゴンっと降ってきた。


◇◇◇◇◇◇


夢をみた



小さなスクアーロが泣いている


俺はソイツの手を取る



あぁ、また泣いているのか





目が覚めた時にスクアーロが泣いていて、しばらく夢か現実かの区別がつかなかった。
8年、知らない間に何もかもが随分と変わったようで、俺はどう接すればいいのか分からないんだ。


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