逆襲。-1


リョウヤ様8888キリリク
連載夢番外編未来設定。
スレナル×夢主キス(マーク?含む)あり甘。
激甘砂吐き注意。バカップルのなれのはて。
結果的に無駄に甘さの限界に挑戦した感じ。
たぶん微エロまではいってないと信じたい。


 雪那が木の葉に来て、もう何年経っただろうか。
 俺もあいつも、初めて会った時はまだまだ子どもだった。少なくとも、外見は。
 それが、俺はもう雪那の身長をずいぶん追い越したし、雪那もすっかり女らしくなった。……しつこいようだが、外 見 は 。

 ただでさえ黙っていれば美少女だった雪那は、今やすっかり綺麗になっちまって狙う男が後を絶たない。……もちろん俺が全力で影から阻止してるけどな。
 まああいつは相変わらす鈍いから、そういうのにいまだにあんま気づかねーのが救いなのかそうじゃないのか微妙なところだ。

 だいたい、美少女に夢を見て顔で選ぶような男が雪那のあの性格についていけるとは思えねー。俺はもう慣れたけど。
 ……それに雪那は俺の前では可愛い。いやむしろどんな雪那でも可愛いと思える。
 昔は俺のほうが雪那にかわいいかわいい言われてたけど、今や立場は逆転した。
 愛は盲目、俺は今その言葉を自らの経験をもって噛み締める。
 もう羞恥心とか気にしていられない。そんなもん邪魔にしかならねえからだ。真正面から本気で真っ直ぐぶつからねーと、あいつ本気で気づかねえし。
 任務の時なんかは人の言動の裏の裏まで読んでるくせに、こういうことはほんとに鈍いんだよな。

 だから俺は開き直ったし素直になった。こと雪那のことに関しては。

 そんなわけで、俺が任務で里をあけてる間に雪那に近づく男どもに、ちょっとばかし牽制をかけておこうと思う。
 雪那は俺のだってこと、いいかげん分からせてやらねーとな?

 で、里外任務帰りの俺は、出発した時より三割増しくらいのスピードで木の葉に戻っているわけだ。ちなみに三割増しってのは、この任務で表のうずまきナルトが成長したと思わせるギリギリ限界の数字である。我ながら面倒な設定にしたもんだと思うけど、こればっかりは仕方がない。
 一応、そろそろ表の方の実力も、徐々に裏に合わせていっていいとお達しは出てるからな。
 だけど、徐々に表の実力を認められてきているとはいえ、えっマジこれ俺ひとりで? そりゃ影分身すりゃ頭数は補えるけどな? みてーな、表の俺なら半年はかかりそうな任務回してくんじゃねーよ!
 半年もかけてられっかと思って本気でやっても、一ヶ月近くかかっちまったじゃねーか!!
 これで雪那に変な虫ついてたら、綱手のババア覚えてろよマジで!


逆襲。


 夕飯時の一楽は、ひどく混雑していた。
 厨房は戦場というけれど、接客業もまた戦いであると言える。ことに最近の雪那にとっては。
「セツナちゃん今日も可愛いね! 味噌チャーシューひとつ!」
「はいはーい、ありがとうございまーす」
「あ、おれは塩ね! そんでセツナちゃんの笑顔をテイクアウト!」
「塩ラーメンですねー、でもスマイルのテイクアウトは一千万両ですよ☆」
「ええ!? セツナちゃんテイクアウトできるなら一千万両出すよマジで!!」
「あははー寝言は寝てる時にお願いしますねv(……コイツ上忍だな高給取りかよしかもいつの間にかスマイルじゃなく私テイクアウトになってるし!!)」

 雪那は現在表向き、一楽にアルバイトとして雇われている。
 仕事は主に忙しい時間帯の給仕と厨房のちょっとした手伝いだが、どうしたことか最近やたらとお客さんに話し掛けられることが増えた。
 おっちゃんやお兄ちゃんたちの「可愛いね」なんてどうせお世辞だろうと適当にあしらってはいるものの、たまにしつこいお客さんがいる。
 まあ目の前にはテウチさんが睨みをきかせているから、そうそうセクハラまがいの言葉をかけられることもないんだけど。

 けれどやっぱりたまーに、テウチさんの目を盗んで(盗んだつもりかもしれないけど見えてるよテウチさんには……!)セクハラしてくるヤツってのはいるもので、そういう男には偶然と事故を装って容赦ない反撃を浴びせかけてやったりもした。
 うっかり足を滑らせて熱湯ラーメンスープをお見舞いしたり、うっかり手を滑らせて包丁をすっとばしてみたり。
 うん、乙女の敵への当然の報いよねこのくらいで死ぬようならアカデミーからやりなおしてこいマジで。
「テウチさぁん、味噌チャーシュー一丁、塩一丁です!」
「はいよ!」
 そんな黒々と渦巻く内心はきれいに押し隠し、雪那はカウンター内のテウチさんに声を掛ける。
 この狭い店の中で客席と厨房それほど遠くはないから、わざわざ復唱しなくても聞こえてるとは思うけれど、テウチさんはテウチさんで他のお客さんのオーダーを受けていたから、一応伝えなければならない。
 雪那の声に威勢良く答えたテウチさんが、続けて指示を出した。

「セツナ、チャーシュー切ってくれるかい」
「はーい」

 あんまりお客さんがしつこく雪那にちょっかいをかけようとすると、テウチさんはこうして奥にかくまってくれる。
 ほんとにチャーシューが足りないわけではないんだけど、雪那は申し訳程度にチャーシューをスライスするためにありがたく奥(って言ってもそれほど離れてはいないんだけど。小さいお店だし)に引っ込んだ。

 薄い板の壁一枚で隔てられたテウチさんのいるカウンターに背を向け、雪那はひとつ、悩ましげな息を吐く。

 ……はあ、ナルトに会いたい。

 ナルトの表の立場も大分変わって、裏の仕事との差が少なくなった分、重要な任務を任されて長期で里の外へ任務に行くことも増えた。
 雪那の立場が表向きは一般人(まあ表向きの仕事は諜報部の溜まり場である一楽のバイトだから、ある意味一般人と言いがたいかも)である以上、ナルトの表の任務にはついていけない。
 結局会える時間はあんまり多くなくて、それがちょっと……ていうかすごくすごーく寂しいんだけど。

 ああもう、今仕事中なのに、ナルトのこと思い出しちゃったらきゅんきゅんして涙が……ッ!

「うう……ナルトが足りない……」
 雪那はラーメンの湯気に囲まれながら、しょんぼりうなだれて呟く。
 だってもう一ヶ月も会ってない。影分身にすら会ってない。萌えと癒しと愛が足りないーー!!

「なんだいセツナ、ナルトなら冷蔵庫に入ってるから、出して薄切りにしてくれるかい? とりあえず一巻き」
 雪那の小さな呟きを拾ったテウチさんが、すばらしい手さばきでラーメンをざるに上げながらそう言った。

 うん、さすが聡耳の一楽。地獄耳。
 でもごめんなさい、そのナルトじゃないんです。


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