合図。-2 俺たちには、いくつかの暗黙の合図がある。 合図。 〜Side ナルト〜 雪那は昔から、スキンシップが好きだった。何かにつけ抱きつかれたし、抱きしめるとそれだけでとろけそうに幸せな笑顔を見せる。 どうしてなのかと聞いたとき、大切なひとの体温や鼓動を感じることで、そのひとが生きてるって確かめたいから、とすこし言いにくそうに教えてくれた。 いつも死と隣り合わせのナルトにも、その気持ちは痛いほどよくわかる。 だから朝起きて一日の一番はじめに会う時、別々の任務から帰ってきて最初に顔を会わせた時、目が合ったらそれは、抱きしめて、の合図。 ぎゅっとしてお互いの体温と鼓動を確かめたら、おはようとおかえりのキスも忘れない。 それもまた、暗黙の了解。 もうすぐ火影を継ぐことが決まっているナルトは毎日多忙だったけれど、少し時間が空けばたいてい雪那のそばで過ごすことにしていた。 もちろん自分の休みに雪那の仕事を入れるなんてことは、よっぽどのことがない限りしない。 彼女に用事があるなら仕方がないと諦めるが、雪那も基本的に予定を入れないでおいてくれる。 それは、休みを一緒に過ごしてもいいよ、の合図。 本当は片時だって離したくないから、できるならずっと捕まえて、触れて、抱きしめていたい。 なめらかな長い黒髪を撫でていると、雪那はいつも気持ちよさそうにうっとりと目を細める。それが猫みたいですごく可愛い。頭からかぷりと食べてしまいたいほど、たまらなく可愛い(たまに実践して怒られる)。 そのまま眠ってしまうこともあるけれど、ナルトは起こさなかった。そういう時はたいてい無理をしたあとで、雪那は相当疲れているからだ。 すいよすいよと気持ちよさそうに寝息を立てる雪那を、ぎゅっと抱きしめるのも幸せだと思う。子供のころとは違い、まろやかな曲線を描く彼女の身体はひどくやわらかくて……まあ、ちょっと生殺し状態でもあるけれど。 起きていたら起きていたで、時々くすぐったそうに首をすくめながら、ほんのり目元を染めて潤んだ瞳で見上げてくるから、いろいろ我慢ができなくなるのは仕方のないことだった。雪那、正直その角度は反則だ。 抱きしめるだけでは足りなくなって、その瑞々しいくちびるにかぶりつきたくなってしまう。 なめらかな頬をたどり、ほのかに色づいた果実のようなそれを親指でなぞると、水分を含んで揺れる大きな瞳がまぶたの奥に隠される。 それは、キスしてもいいよ、の合図。 その瞬間もう我慢できなくなって、あとは夢中で雪那のくちびるを貪るだけ。 ……で、息継ぎの合間に甘い声で名前を呼ばれて一気に理性を吹っ飛ばされ、そのまま押し倒してなしくずしにうにゃうにゃ、なんてのもよくあることだけど……まあいっか。 だってそれはふたりをとろけるほど幸せにしてくれる、合図だから。 【終】 【夢小説トップ】 【長編本編目次】 【サイトトップ】 |