合図。-1


月華様8000キリリク
連載夢番外編未来設定。
ナルト17〜18歳を想定。
砂吐き注意。
バカップルのなれのはて。


 私たちには、いくつかの暗黙の合図がある。


合図。
〜Side セツナ〜


 ナルトはことのほか、背後から雪那の名を呼ぶのを好む。
 以前理由を聞いてみたら、雪那が振り返った時ナルトの姿を確認して嬉しそうに笑う、その瞬間がすごく好きなんだ、とすこし恥ずかしそうに話してくれた。

 だから後ろから呼ばれたら、それは振り返って笑って、の合図。

「セツナ」
「――おはよう、ナルト」
「ん、おはよ」

 そのままぎゅっとして、おはようのキス。
 それもまた、暗黙の了解。


 基本的にナルトはいつも忙しいけれど、少し時間が空いた時はたいてい自宅で過ごしている。
 隣接した雪那とナルトの部屋は、今やお互いの部屋を遮る壁の一部をくりぬいてドアが設置されているから、もうすっかり同棲のようなものだったけれど……やっぱり一緒にいられる時間はそう多くなかった。
 そんなわけで多忙なナルトの貴重な休みには、よっぽど彼女でなければならないような状況でもない限り、上司でもあるナルトがまず雪那に任務を入れない。

 それは、休みを一緒に過ごしたいという合図。

 だから雪那もよっぽど重要な用事がない限り、予定は入れないようにしている。
 一緒にいたいのは、同じだしね。


 たまには忍術のことで教えを請うこともあるけれど、たいていは何となくくっついたまま、雪那の作ったお菓子をつまみながらお茶したり、本を読んだりしてまったりと過ごす。

 ナルトは最近、雪那の髪がお気に入りらしい。さらさらと指の間をこぼれる絹糸のような感触を楽しみながら髪を撫でるナルトの手は、もう雪那よりひとまわりは大きくなっていた。
 かつてちっちゃくてプニプニしていた面影はどこへやら、少し骨張っていて、すっかり男のひとの手といった感じだ。だから、雪那はそれをされるとちょっとどきどきしてしまう。
 だけど頭を撫でられているとそのうち眠くなってしまって、そのままぐっすり、なんてことも多い。ちょっともったいないと思う。
 起きていたら起きていたで、時々その手が頬やうなじのあたりを行き来したりするから、まったりしているどころじゃなくなるんだけど。

 そうして頬をすべり降りてきたナルトの手が、親指で雪那のくちびるをなぞったら、それはキスしたい、の合図。

 向けられるだけで溶けてしまいそうなほど熱い視線から、逃げるように目を閉じれば……あとは優しく強引に、吐息を奪われるだけ。


 ……で、ナルトの唇に翻弄されているうちにキスだけじゃすまなくなって、そのまま押し倒されてなしくずしにむにゃむにゃ、なんてのもよくあることだけど……まあいっか。
 だってそれはふたりをとろけるほど幸せにしてくれる、合図だから。


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