costumeplay! -上- |
「ゆかり〜ん♪ お願いがあるんやけど〜♪」 「……また?」 「うんまた♪ ほんで、今回はプラスで……ゴニョゴニョ……」 「…………。おもしろそうだから協力してあげるけど……謝礼弾んでもらうよ?」 「そう言うてくれる思うたわ♪ ほな、よろしゅ〜」 『旧校舎地階、 演劇部部室迄来られたし。 紫』 部活に来たかんな、志乃、なのの三人が見つけたものは、その場にいない紫の書き置きで。 「一体なんなんだろうね?」 「さあ……」 「ていうか、旧校舎に地下室なんてあったんですか?」 「うん。半地下になってるんだけどね、裏口の近くに階段があってそこから降りれるよ」 書き置きに従って階を二つと半分降り、演劇部の部室にやってきた三人を出迎えたのは―― 「「お帰りなさいませ、お嬢様」」 金髪縦ロールのゴスロリメイドと、正統派執事服をバッチリ着こなした―― 「「「紫ちゃん(センパイ)!?」」」 「やあ皆、いらっしゃい」 ――執事姿の紫だった。 細身の黒いジャケットとパンツに白いシャツ、チャコールグレーのベストにリボンタイ。長い髪は片側に流してベルベットのリボンでひとつに束ねている。オーソドックスな執事姿だが、誂えたかのように紫に良く似合っている。 「どうしたの、その格好?」 「すごいカッコいい! 似合うー!」 「紫センパイ! さっきのセリフもっかいプリーズ!」 口々に喋り出す三人に、紫は少し身をずらすと、ゴシックロリータ風にアレンジを効かせたメイド姿の小柄な美少女を指し示した。 「この格好は彼女の依頼でね。 こっちのゴスロリメイドは私の友人なんだけど、たまに頼まれてこういう格好をすることがあるんだ」 ゴスロリ美少女はペコリと頭を下げた。 「こんにちはー。近くで見たら、やっぱり皆美人さんやわぁ。 ウチは2−Aの有森和美。アリカって呼んでーな。ちなみにアリカっちゅーんはコスネームや。『アリ』モリ『カ』ズミやから『アリカ』やな」 「ゴスロリメイドな見てくれでコテコテの関西弁という超強烈なインパクト。すごいでしょ? 今日は彼女から皆へ依頼があるんだって」 「せや。ウチな、皆にどーしても着て欲しいモンがあってん。奥に個室があるさかい、これに着替えてきてや」 「えーっと……話が読めないんだけど?」 アリカから大きな袋を渡され、受け取りながら首を傾げたかんなに、紫は笑顔で応じた。 「その中の服を着てほしいんだって。……まあ、着せ替えごっこだと思って楽しんで欲しいな。先払いで報酬受け取ったし」 「え? 報酬? 何もらったの?」 「うん。皆に還元できるもの」 志乃の問いにも謎めいた笑顔を返しただけ。 「紫センパイ! あたしの袋、やたらとおっきいんですけど……」 「なのっちのはウチが着せたる。ひとりで着るのはムリやからな」 ひとり、ケタ違いに大きな袋を持たされたなのは、アリカに引きずられて一番手前の個室に消えた。 ………………そして。 「ちょちょちょっとっ! アリカさん脱がさないで下さいっ」 「だって脱がさんと着せられんやん。……ってアンタすっごい胸あるやんか! ちょおサイズ計らせて!」 「キャーッ! かんなセンパイ志乃センパイ紫センパイ助けてぇ〜!」 扉の向こう側から聞こえてくる声に、紫はイイ笑顔で手を振った。 「なのっち〜! ドナドナ〜! ファイト〜!」 「ドナドナって……売らないでくださぁい! あっアリカさんそんなとこ触らないで……!」 「うっわ! すっご! ホンマに!?」 「アリカ〜! あとでデータ頂戴!」 「ラジャー!」 生き生きしている紫を見て、かんなと志乃は顔を見合わせ小声で言い交わす。 「なんか……そこはかとなく不安なんだけど……」 「アタシも……」 「大丈夫だって! それより二人とも、早く着替えてみせてよ」 紫のとびきりの笑顔に促され、かんなと志乃は不安いっぱいのまま、それぞれ個室へと消えた。 |