costumeplay! -下-



 


「ゆかりん……ウチええ仕事した思わへん?」
「グッジョブ、アリカ! 素晴らしいよ!」
「ちょっと紫センパイ! アリカさん! あたしは一体どこからツッコめばいいんですか〜!?」

 叫ぶなのに紫は極上の笑顔を向けた。

「なのっちは基本ボケキャラだからツッコミは要らないよ。それより自分の姿を鏡で見てご覧」

 そしてなのの台詞を一刀両断した紫は、彼女が写るように姿見を動かした。
 ――はだけた胸元、豪奢な着物。これでもかと盛った髪いっぱいにあしらわれた簪や髪飾り。

「最初は舞妓さん風にするつもりやったんやけどねー。なのっちの胸がデカいから方針転換したんよ。『隠せないなら出しちまいな!』な花魁風なのっち♪」
「流石アリカ。このデコルテの見せ方がたまらないね」
「紫センパイ……台詞がいかがわしいです……」

 なのはガックリしたが、そこでハタと気づいた。その場にいない二人の先輩。着せ替えごっこ。イコール……

「あのーアリカさん。かんなセンパイと志乃センパイもひょっとして……」
「今着替え中や。楽しみやろ?」
「ハイ! でも、あたしたちがお着替えする意味はなんなんですか?」
「ウチが楽しいんや♪ リアル着せ替えごっこや! かわいー女の子を着飾らせるんはウチのロマンや!」
「……じゃあ紫センパイが男装な理由はなんですか?」
「ゆかりんはこっちんが似合うからええんよ。そんじょそこらのオトコよりよっぽどカッコエエからな」

 なあ? と言われてイイ笑顔を浮かべる紫。

「似合うものを着た方がいいからね。……っと。そろそろ二人、着替え終わったんじゃないかな」

 視線をやった紫に釣られるように振り向いて――なのは目を見開いた。



 黒のミニ丈ワンピースにフリルの付いた白いエプロンを組み合わせたエプロンドレスに、白いフリルの付いたカチューシャ、レース付きのニーハイソックスという、クラシックなメイド服に身を包んだのはかんなだ。絶対領域を横切るガーターベルトがなんとも艶めかしい。
 対する志乃は……薄いピンクのモコモコ服。短め丈のパーカーに同じ素材のホットパンツ。白のニーハイにモコモコのレッグウォーマー……

「……って違ーう! 志乃ちゃんフード被って!」
「えっあっハイ!?」

 アリカの気迫に押されて志乃がフードを被ると……ピョコンと立つ、ウサギ耳。

「萌えや萌え! うさ耳や!」
「メイドさんにウサギ! ラブリー!」
「アリカ……バニーガールじゃないんだね……」

 些か残念そうに言う紫に、アリカは指を立てて言う。

「チッチッチ。違うでゆかりん。バニガのエロ格好良さより絶対領域のが萌えを提供するんや」
「成程……」
「萌えます!」
「そこ納得しない!」

 アリカの言に納得する紫となの。ツッコミ入れたのは志乃。かんなは笑顔で姿見の前でポーズをとっている。

「かんなちゃん……ご機嫌ね?」

 志乃の問いにかんなは笑顔で応じた。

「なかなか着られる服じゃないし、誰かに見せる訳でもないし。わたし、可愛い格好するのは嫌いじゃないわ。
アリカちゃんが満足すれば解放してもらえるでしょ? ねえ紫ちゃん?」

 カメラを持ち出して写真を取り始めたアリカを見ながらかんなが言う。紫は苦笑しながらアリカに釘を刺した。

「アリカ〜。写真の流出はNGね?」
「わかっとる! ウチが個人的に楽しむんや!」
「……個人的に、って言うのがメッチャ気になるんですが……」

 被写体になっているなのが些か不安そうに言う。紫がなのの落ち掛けた簪を直しながら答えた。

「アリカは可愛い女の子が大好きだからね」

 それ笑顔で言うこと違う!
 言いかけたなのの口に指を押し当て、紫は蠱惑的に微笑んだ。

「写真、一枚くらいもらっておきなよ。……いつか下野を誘惑するのに使えるかもよ?」






costumeplay!




(ところでこの話、オチはあるんですか?)
(そんなものはない。)



 
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