04 - 一緒がいいね



朝練後に教室へ行くと、自分の席へ辿り着く前に、ブン太にちょっと来いと呼ばれた。そのブン太の机の周りには他の男子や女子も数人いて、そいつらの輪に連れ込まれる。


「やっぱ夏休みがいんじゃねーかなぁ。もしくは10月か」

「夏休みだったら終わりの方じゃないとテニス部厳しくない?」

「どう?仁王くん」


クラス内のわりと中心ポジションの女子、野口にそう振られるものの、何の話をしとるのかまったくわからん。俺はわからんが、ブン太はたぶんこのミーティングの中心人物。説明しろと言わんばかりに軽くつま先で足首を蹴った。


「3年って卒業旅行ないじゃん?だからうちらで企画して行こうぜって話。日帰りだけど」


なるほど。うちでは卒業旅行は2年次に行く。この3年次、3年B組でも行きたいってことじゃな。


「B組だけで行くんか?他のクラスのやつも?」


一学年多いうちの学校じゃ全員は無理じゃろうけど。せめて体育が一緒のA組や隣のC組、なんなら他のテニス部のやつらのクラスも一緒だったらおもしろいんじゃないかと思った。

が、その俺の質問は、そこにいるやつら全員に否定される。普段みんなの前であんまり発言しない俺は、全否定というものに慣れてないせいか少し引いた。


「B組っていうかここにいる人たちだけね」

「一応クラス全員に声かけるんだっけ?」

「どうかなぁ、人数多くなるといろいろ…」


確かに人が多くなればなるほどいろいろ面倒事が増える。おまけに生徒の自主企画じゃし、あくまでプライベートな身内でのイベントに絞ったほうがいいってわけじゃ。


「まぁテニス部ではまた別に行くし、ここのやつらだけでいいだろい」


さらに隣にいるブン太にそんなことを耳打ちされ、まぁ確かにそれはもっともじゃなと思った。テニス部のやつらとの旅行なら学年の違う赤也も来れるしな。

まったく異論はない。が、ふと自分の席方面を見た。もちろんと言うべきか、土屋はまだ来てなくて、たぶん旅行にも来ないんじゃろうなと思った。クラス全員に呼びかけるならわからんが、さっきの話じゃそれもなさそう。


「俺は全部任せるぜよ」


そうブン太にコソッと告げて、席に鞄を置きがてら窓際に向かった。そろそろ、じゃないとやばいはず。

窓から校庭を見渡すと、バタバタと必死こいて走って来るヤツがいた。案の定、土屋。


「遅い」


斜め下の玄関前に差しかかったところで少し大きめの声でそう言うと、2、3回キョロキョロしたあと、俺のことを見つけた。


「おはよー!」


へらっと笑って手を振り、慌てた様子で玄関口に飛び込んでいった。こんな光景、最近はしょっちゅうで、毎朝時間ギリギリに走って疲れんのか気になるところ。まぁでも遅刻したらしたでおもろそうじゃなとは思った。

その後無事土屋も到着し、直後に担任もやって来た。担任はちょっと早めじゃなと思ったら、そういや今日は決めることがあるとか何とか言っとったな。


「今日は来月の球技大会、それぞれ参加する種目を決めます」


3年始まってすぐに決めた委員会、そのうちの一つである体育委員×2が前に出て、ツラツラと黒板に書き始めた。男女それぞれの種目だ。毎年ほぼ変わりはなく、バレーボールやサッカー、バスケなんかがあるが。


「仁王くん、何やるの?」


隣の席からコソコソっと、土屋から声をかけられた。
基本的に自分のやりたいやつに手を挙げてやる。ただし、所属しとる部活と同じ種目は禁止。人数が偏ったら適当に移るか、ジャンケンか。

ちらっと斜め後ろの方の席のブン太を見た。すぐに目が合うと、ブン太は無言であるポーズをとった。腕をくっつけて伸ばすアレ。確認後、土屋に伝えた。


「バレーボールじゃな」

「バレーボールかぁ…」


去年と同じ。テニス部連中はけっこうみんなしてバレーボールを選択する。ネットを挟むってだけで勝手は違うが、何となくテニスと似てる気もするし、普段のテニスではなく別の競技でやつらと対決するのがおもしろいから。


「じゃあ私もそうしよっかな。仁王くんいるし」


何か意識してとか、考えた上での言葉ではなさそうな、まるで仲のいいクラスの女友達の横でそう言ってるかのようだった。思わず土屋をじっと見るも、視線は黒板のまま。

今の土屋の言葉は別に嫌だとかそういう意味じゃない。むしろ、なぜか少しうれしかった。


「やっぱバスケのほうがいいかも」

「…優柔不断じゃな」

「だってバレーボールのサーブ苦手なんだもん」

「バレーボールにしんしゃい」

「えー」

「サーブは練習すればすぐできるようになるじゃろ」


俺が一緒だからと言っても、男女トーナメントは別じゃし、それどころか練習だってたぶん別。ブン太と違って一緒の種目にする意味なんて全然ない。

全然ないが、さっき密かに感じたうれしさ。アナタがそれなら私もそれがいいって、友達として普通にありがたい言葉じゃき。


「じゃあバレーボールに……っていうか、そもそも仁王くんと一緒にやるわけじゃないよね」


気づくのが遅い。が、友達は同じ種目をやるもんだと言うと、なるほどと少し納得したように頷いた。

その後、女子はバレーボールが圧倒的に人数が多くジャンケンになったが、変なところで運がいいらしい土屋は見事、パーでイチ抜けしとった。よくできました。

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