永遠の愛を






この話の前のお話です。


「ねえ、テリー。永遠の愛って信じる?」


真剣な眼差しで問いかけてくるバーバラにオレは何と答えたのかもうそれすらも覚えていない。


***


「今日はいい天気よ。テリーもたまには気分転換に外へ出たら?」
「あぁ」
「腕も鈍っちゃうんじゃない?」
「あぁ」
「そうそう、レックがテリーに会いたがってたわよ。会いに行ってあげたら?」
「レックが?」
「結婚、するんですって」


洗濯物を干していたミレーユ姉さんが嬉しそうに微笑む。太陽の光を背に微笑む姿はやけに神々しくて眩しかった。


「結婚、か。もう、そんな歳か」
「そんな年寄りくさいことは言わないの。あなたもレックもまだ20じゃない。私からしたらまだまだ子供よ?」
「オレがいくつになっても姉さんは同じことを言いそうだな」


オレの言葉に姉さんは目を丸くしながら口元に手を当てていた。どうやら図星だったようだ。


「レックのとこ、行ってくる」
「いってらっしゃい」


ルーラを唱えてレイドックへ行き、城下町をふらふらと歩いていると肩に何かぶつかった。その原因はどうやらフードを深く被った少女だった。少女の遠く後ろには何やら物騒な男の影があった。単純に考えれば借金取りだろうか。


「あ、ご、ごめんなさい!」


少女はぺこりと謝ると慌てて走り去った。フードから見えた赤色の髪につい少女の腕を掴んでいた。そのまま人気のない路地へ戸惑う少女の腕を引っ張りながら連れて行く。
追っ手が遠のく足音を聞くと身を縮ませていた体勢から静かに立ち上がり、軽く埃を払った。
人助なんて慣れないことをしてしまった。
きっと赤色の髪があの少女を思い出させたからだ。


「あ、あの!ありがとうございました!あたし、酒場で働いてるのでもし良かったら来てください!サービスするから!」


少女は被っていたフードを下ろし、にっこりと笑った。
そして、その笑顔に絶句した。あまりにも彼女に似ていたからだった。


気付けば酒場に足をよく運ぶようになっていた。サービスしてくれるからとか、そういう理由ではなく、ただあの少女と会うためだけにあまり好きではない酒を無理やり喉に通していた。


「ねえ、本当に本当にレイドックの王子様とお友達なの?」


年齢も同じで何度も足を運んだせいか少女はオレに対して打ち解けていた。


「あぁ。二、三年前、旅をしていた。その頃からの仲だ」
「へえー、テリーって青い閃光といい、レイドックの王子様とお友達とか、すごいのねー!あたしの世界と全然違うわ」
「別にそんな、大層なものじゃない」
「もうー、謙遜しちゃってー!照れなくていいのにー」


楽しそうに笑う少女はいつの間にか自分のかけがえのないものになっていた。
少女といると欠けていたものがだんだんと補われていくような、そんな感覚になる。
ただバーバラと少女の違いを見つけると満たされかけていたものがバラバラに崩れていって元に戻らなくなる、そんな感覚に陥ってしまう。オレはこの少女に何を求めているのか。
バーバラの代わりなんてなれやしないのに勝手に求めて違う部分を見つけたら勝手に裏切られた気分になる。こんな自分に嫌気が差しても相変わらずこの酒場に足を運んでしまうのだから不思議だ。


「で、いい加減お前は借金は返したのか?」
「もっちろん返したわよ!親に事情を説明してちょっと協力してもらったの。すっごく怒られたけどね。やっぱ憧れだけで都会に来るのは無謀だったかも…」
「お前の親御さんの気持ちがよく分かる。お前は騙されやすいから都会より故郷の田舎の方が上手くやれるだろ。もう、帰ったらどうなんだ」


田舎に帰ってくれればもうこんな辛い気持ちにはならない。早くオレの前から、オレの手の届かない場所へ行って欲しい。


「…テリー、あたし、テリーのこと好きなの。だから田舎には帰れない。」
「変な冗談は…」
「冗談なんかじゃないよ。あたしは本気。ねえ、テリー、あたしと結婚してくれる?」


(永遠の愛はずっとその人のことを好きでいることなんだよ。ずっと、ずっと。ねえ、テリーはあたしに永遠の愛を捧げられる?)


オレは…、バーバラ、のことが、


「テリーに助けられたあの日からずっと好きだった。正直実は一目惚れ…」


(あたし、テリーに一目惚れしたんだけど性格は悪くてやっぱ好きじゃないかもって思ったんだ。でも、テリーは素直じゃなくて捻くれてるだけのただの優しい男の子だったからあたしはテリーのこと好きになったの間違いじゃなかったんだって思ったんだ)


「急にこんな告白してごめんなさい。でも、あたし、テリーのこと好きで、」


(あたしが永遠の愛を捧げるのはこの人だ!って思ったのはテリーだったよ。あたしはテリーへの永遠の愛を誓います。えへへ、なんだか結婚の誓いみたい!いつかテリーと結婚する日が来るのかなー)


「わかった。結婚しよう」
「本当…?」


(当たり前だろ。オレぐらいしかお前の貰い手、いないだろ)
(なんかムカつく言い方だけど、まぁ、いっか。絶対に結婚しようね。約束だよ?)
(あぁ、約束)


約束破っちゃってごめんな。
うそつき、








(20150806)







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