残酷にも告げられた (5/10)




一ヶ月が経った頃。前々から城の修理したがっていた相棒であるハッサンがレイドック城に訪れていた。


「全部直しといたぜ!」


ハッサンがレックの部屋にノックもせずにずかずかと入る。


「おー、ありがとな。」


「なんだよ。もっと喜べって!」

ハッサンが笑いながらレックの肩を叩き、レックはそんなハッサンに苦笑いする。
レックは行方が分からなくなってしまったバーバラのことが気になって気になって仕方がなかった。

「……バーバラのことか?」


ハッサンはやれやれとため息を溢して、レックに問いかけた。


「…知ってたのか、ハッサン」


「まぁな。姐さんが言ってたんだよ」


ハッサンが頬をかいて言う。


「ミレーユはそれ以外になにか…言ってたか…?」


勘の鋭いミレーユのことだ何か感ずかれているのではないかとレックは不安だった。


「いや特には…ただ、」


ハッサンが言いにくそうに口をもごもごさせる。はっきりと思ったことを口にする男にしては珍しいとレックは思った。


「酷く思い詰めてたなぁ…。」


ハッサンが苦しげに呟く。


「……そうか」


ミレーユに悲しい思いもさせたくない、不安な気持ちにもさせないとミレーユにレックはプロポーズするときに告げたというのにミレーユにそんな気持ちを抱かせてしまったことにレックはどうしようもなく胸を締め付けられた。
コンコン、とノックされ返事をする間もなく扉がいきなり開いた。

「なんだいるじゃないか」


「テリーかよ」


一瞬バーバラかと思ったがそこにいたのはテリーだったことにレックは落胆した。


「久しぶりだな、テリー!」


「あぁ、ハッサンも来てたんだな」


ハッサンはさきほどの雰囲気を壊すようにそう言うとテリーも口角を上げ、少し笑う。


「なにしに来たんだよ、お前」


「なにか用がないと来ちゃいけないのか?それは初めて聞いたな」

レックの問いかけにテリーは鼻で笑う。


「そういう意味じゃなくてな…!」


「ほらほら喧嘩すんなって二人とも」


ハッサンが珍しく最年長らしくレックとテリーが喧嘩しそうなところを止める。
旅をしている間もよく二人はこうして喧嘩してはミレーユが仲裁をしていた。


「…そうだな。オレもわざわざ喧嘩にしに来たわけじゃないしな」

「いちいちムカつくな」


「まぁ、そう言うなって。…もう一ヶ月前だったか、レイドック城の前でバーバラに会ったぞ」


「バーバラは今、どこに!?」


その言葉にレックがテリーにすかさず掴みかかる。


「オレが泊まってる宿の部屋にいるぜ。アイツ、帰る場所ももうなかったみたいだしな」


「は…」


男女が同じ宿の部屋に一ヶ月も滞在していた。それを指す意味が分からないほどレックはもう子供ではなかった。ただ確証は得られないため、自分のなかでそんなはずないと否定し続けるがその努力もテリーのたった一言によって無駄になった。


「そういえばアイツ、まだ処女だったんだな。てっきりお前と経験済みだと思ってた」


口の端を吊り上げてくっくっ、と笑いながらテリーはわざと嫌みっぽく言った。


「お前…!!」


「レック止めろ!」


血が上ったレックは感情のままにテリーの顔面を目掛けて殴る。我を忘れているレックをハッサンはなんとか床に抑えつける。


「……お前は姉さんを愛してるんじゃないのか。もう恋人じゃない女が他の男に奪われただけで何故そんなに怒る?」


テリーの目はただ冷たく、感情の機微は感じられない。


「………………」


そんなテリーにレックは押し黙ることしか出来ず、唇を強く噛み締める。


「レック、お前…本当は姉さんのことなんて愛してないだろ。本当はまだバーバラのことが好きなんだろ」


「ちがうっ!オレは、オレはっ!」


「お前は姉さんをバーバラを忘れるための道具として利用した。オレは姉さんを裏切ったお前を許さない。絶対にな」


殴られた頬を抑えながらテリーはレックを見下ろしながら冷たく言い捨てた。




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