ファンタジーによくある神と超能力についての考察
二人に、アディの殺人衝動のことを話した。とはいっても、私もあまり聞かされてないし、養ってもらってる身としてはアディに肩入れするのはどうしようもないことだから、無意識のうちに少々偏った情報になっているかもしれない。
「つまり、お前はあいつの殺しはしゃーねー、って言いてえんだな?」
「うん。食欲と同じくらい仕方がないと思う」
食べるのだって、牛豚鳥さん殺してるわけだしね。
ロイルはしばらくうなった後、隣のケーラを横目で見た。
「ケーラ。今の話、どう思う」
「嘘では…ありませんね」
確かにホントのことだけど、なんで断言できるんだろ。
私がキョトンとしているのを察したのか、ロイルが私を見てニヤリと笑った。
あ、黒チェシャ猫。
「こいつな、相手が嘘付いてるかどうかがわかんだよ」
「え、嘘ついてるかわかるって、それ話の内容も?」
「いえ、話の内容が嘘かどうかまでは、私にはわかりません。発言者が、意識的か無意識的かに関わらず、嘘かを知っているかどうか、です」
へぇー。でもそれでも十分便利よね。
「最も、私が嘘でないと判断したのは、それだけではないのですがね」
私とロイルがケーラを見る。
「どいういうことだ」
「私個人でも、そのような話を聞いたことがあるのですよ」
「昔にも、アディみたいに殺人衝動がある人がいたの?」
だとしたら、アディは喜ぶだろう。衝動を抑えるヒントがあるかもしれない。
ケーラは頷いていった。
「はい。確認されているものでは、そのような説明し難い不可思議な力は、少なくとも四つあります。
一つが、アディのような殺人衝動。
傷が一瞬で治る、治癒能力。
相手の考えを読む、読心術。
そして、私のように嘘がわかる、真偽判別能力。
この四つです。現在研究中のものもございますし、まだ発見されていないものもあるでしょうが」
「…なんか殺人衝動だけ割に合わねぇな」
「そうだね…ほかのはそれなりに役に立てられるもんね」
「アディは本当に、お気の毒様です」
「ちなみに。それを抑える方法は?」
「伝わっておりません」
「あー…」
三人一緒にため息をつく。
なんか、アディを哀れむ会みたいになっちゃってる。
「まあいいや。ケーラ。その話、あとでアディにもしてあげて。同じ分類分けされる人が人がいるってだけで、結構安心すると思う」
「そういうもんですか?」
「そういうもんだよ」
「わかりました」
「にしてもさぁお前」
横からは顔ごと口を入れてきたロイルの表情を見て、アディを哀れむ会が終わったことがわかった。
「楽しんでるだろ」
「何故分かった」
ファンタジー好きな私としては楽しい限りです。
「お前ポーカーフェイス気取ってっけど、雰囲気までは隠しきれてねーからな」
「いや、無表情は地なんだけどな…」
それよりも、気になったことをケーラにきいた。
「ケーラさっきさ、多分もっとある的な言ったけど、なんか確証でもあるの?」
「確証というほどではありませんが、私の推測では、あと3、4種類はいるかと」
「なんで数字まで出せるんだ?」
ロイルも興味ありげにケーラを見ている。
「あー、一応聞きますが。リト、貴女は心から信仰している宗教などはありますか?」
「ないよ」
ないから宗教ものとか好きなんだよ。
「なら良かった。いえ、信心深い方となると、他の神話を受け入れないことがあるので」
「神話が関係あるの?」
「関係あったほうがしっくり来ますから」
「あー、なるほど。それで7、8種類か」
ロイルが既に納得顔だ。
なんか、置いてきぼり感が半端ない。
「リト。簡単にお話しますとね、こちらの世界には、神は8柱いると言われ、それぞれに役割が分けられていると伝えられているのです」
あれか、ギリシア神話タイプの多神教だね。海と大地のポセイドンとか太陽のアポロンとか月のアルテミスとかとかとか。
「へー。それ、この世界どこでも同じ?」
「ええ、大筋はどこもさほど変わりませんね。なお、一番権威のある光と生の女神レシアはすでに死んだとされておりますので、今は7柱だと言われております」
「そっか。そいういう予備知識があると、こんなわけわからん能力だと、4よりも7とか8の方が自然だね」
「そうでしょ」
っつか、今もいることになってるのね、7柱は。
閉じたケーラと入れ替わるように、ロイルが口を開いた。
「おいリト。話が終わったんなら、こっちから質問していいか?」
「ん?いいよ?」
答えてからロイルをみて、そして後悔した。
すごく目がキラキラしている。いや、見る人が見れば見とれるくらいの綺麗な顔を近づけられているわけだけれど、私には嫌な予感しかしなかった。ものぐさ的な意味で。
「ニホンとか、あっちの世界の宗教事情を教えろ!」
あたったーーーーーーーーー。めんどくせーーーーーーーーーーーー。
しかし断れない私は、少ない世界史の知識を引っ張り出して答えるのだった。
←|→