鉄と木を比べた場合大きい風邪っぴき子犬はどう考えるか

 「えーっと、ギリシア神話言ったし、仏教言ったし、キリスト教言ったし、あとなんだっけ」
「まだあるのか。大変だな」
「うん、本当に。そのせいで戦争始めたりとか、しょっちゅうだよ。あ、思い出した。イスラム教だ。若いけどすごく歴史に影響与えてる宗教。キリスト教と同じ一神教だけど、偶像崇拝禁止だったり豚食べちゃダメだったりしてる。あれ、牛だっけ?」(※豚です)
 リトのうろ覚え宗教講座は未だに続いてる。正確な時間は分からないが、相当な時間話し続けていると思う。この世界の時計はものすごい高価だし、私のアナログ時計はこの世界についたあたりから止まっている。ん?ということは、私の成長も止まっているのかな?1.5mで?まじで?
「すみません。茶葉が切れたので、珈琲でよろしいですか?」
「かまわん」
「私もー」
 どっちかって言うと、私はコーヒー派。アディが紅茶派だから、久々だ。
「リト。牛乳と砂糖はどうしますか?」
「珈琲:牛乳=6:4。角砂糖=2」
「甘くね?」
「甘いよ?」
「甘党?」
「いや、辛党。って言うとお酒好きな人になるんだっけ。辛いもの好きだよ」
「矛盾してね?」
「どこが?」
 辛いもの好きが甘いものも好きで何が悪いんだよ。ねぇ。
 しばらくそうして、ほのぼのとした時間を過ごしていた。
 が、突然、それをぶち壊す爆音が響いてきた。
「アディか!」
 真っ先にロイルが走っていく。続けて私。ケーラはあっついコーヒーを手にこぼしてしまったらしい。あれは火傷ものだな。
 ロイルについでアディのいるはずの部屋に入る。ロイルが呆然と見る先には、大穴があいていた。
 木でできた、壁に。
 そこから外が見えている。
 そして部屋に、アディの姿はない。
「………今日もいい天気だな」
「………そだね」
「……」
「……」
「「……はぁ?!?!」」
 常識では考えられないことだけど、この状況から考えられることは一つ。
「あいつ…壁をぶち破っていったのか……?」
「…そうとしか考えらんないよね」
「リトお前、結構落ち着いてる?」
「いや、驚きが一周回ってきたみたい」
 そんなことは置いといて、その穴を調べてみる。
「……体当たり?」
「この家、そんなやわな家なの?」
「そんなわけ無いだろ。ケーラが調べたんだぞ」
「だよね。えー、あの子、風邪ひいてるのに」
 あ、お粥もゼリーも完食してる。よかった。
「にしても、なんでアディ窓を狙わなかったんだろ」
 穴は窓の隣にある。窓にはアーガイルに組まれた鉄の格子が…あ。
「…鉄より気の方がやわらかいってか?」
「アディ…恐ろしい子…」



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