キミが好き。
もっと近付きたいな、もっと君の事がが知りたいなぁなんて言って微笑むと御堂筋は気まずそうに目を逸らして、キモ、寄らんといて。となんともつれない言葉を吐き出した。
彼の細い腰に抱き付くと鬱陶しいと至極嫌そうな顔をされるのだけれど本当はあまり嫌がってはいないということはよくわかっている。
「キミと居るとなんや調子狂うわ。」
私を引き剥がすのを諦めた御堂筋は床の上に胡座をかくと溜め息をついた。
私は御堂筋の肩に手をかけて背中にのしかかるように体重をかけると彼の背中もどんどん曲がっていって身体柔らかいなぁなんてぼんやりと考えた。
「でも御堂筋、うちの事お家に入れてくれたっちゅう事は別に嫌やないんやろ。」
「普通に嫌やわ。」
折角部活が休みなのだから構ってよと御堂筋に強請ると彼は自分の部屋に招き入れてくれたわけなのだけれどやっぱりあんまり構ってくれなくて雑誌を読むばかりだ。
「ナマエチャンは僕の何処がそんなにええの?」
「えー?可愛いところ?」
「なんやの、それ。意味わからんわ。」
確かに、高校一年生にして身長180センチを超える大男を捕まえといて可愛いはないなと自分も思ったのだが、本当に可愛いのだ。彼は。
「でもね、御堂筋。言葉で形容できるんなら所詮そんなもんだと思うんやよ。」
「よう、解らんわ。ボクは見えるもんや聞こえるもんしか信じん。」
「簡単に伝えられるんなら世話ないわ。元々カタチのないもんを無理やり言葉っちゅうあやふやな型に流し込んだところでぐちゃぐちゃになるだけやん。」
「見えんものとか聞こえんもんよりよっぽどマシやろ。」
言葉は不確かだ。完全ではない。
「せやね。それなら御堂筋の好きなところ全部手紙にでも書いて送ったるわ。」
「キモいから止めてや。ボクそんなもん貰っても嬉しくもなんともないわ。」
御堂筋ははぁ〜と呆れたように私を横目でちろりと見ると私の腕を引っ張って自分の膝の上へと閉じ込めた。
「お、構ってくれるん?」
「キミが五月蝿いから仕方無く、や。」
「んふふ〜。好きやよ。」
「初めっからそう言えばええやろ。言葉に出来ないとか手紙書くとか面倒臭いわ。」
「私はこの好きって言う言葉に物凄い沢山の気持ち込めてんの。」
「ほうか。」
御堂筋の首に腕を回して口付けると彼も私の背を抱き締めてくれて心地好い圧迫感に少し安心して彼の顔を眺めると薄く開いた瞳が私の目を見つめてそれから、少し逸らされると彼は小さく、おおきに。と呟いた。
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