帳とネオン

「嗚呼やはり夜は好い。」

後部座席に座るブランドーさんは一人上機嫌に呟いた。
街はネオンは目に悪いくらい色とりどりに輝いてその間を私たちは高速で通り過ぎた。
車を運転しているヴァニラは屋敷を出たときからずっと無言で少し居心地が悪かった。
テレンスさんが用意した黒塗りの高級車の座席はフカフカだし、久し振りの外出で本当はワクワクしていたけど、ヴァニラのことを考えると素直に喜べなかった。

ブランドーさんが突然出掛けると言い出したのは今日の丁度、夕方のことだ。
いつもより早く起きてしまったがすることもなく退屈だったのか。
いきなり私の部屋に入ってきたかと思うと開口一番に

「出掛けるぞ、」

と一言。

ヴァニラは乗り気じゃないらしく珍しくブランドーさんに反対した。

「ディオ様、お言葉ですがこの者は体調が良くない故、足手まといになります。」

実際ここ最近体調が思わしくなく、昼間でもベッドから出ることができない状況だった。

「お前がアイザを見ていれば良い。お前ならばこれしきのこと簡単だろう?」

「、しかし、」

ブランドーさんはさも可笑しそうに口許を歪めた。ヴァニラはそれに気づくと苦々しげに顔を歪めた。

「いや、全く。珍しいなアイス。お前がその気なら私は構わないぞ?」

暫くの沈黙が流れた。私は状況が把握できずに二人を交互に見詰めた。

「ただ、室内にこもってばかりいれば逆に身体に悪いだろう。以前、約束もしたしな。」

確かに以前彼とは出掛ける約束をした。しかしこの状況でその話を持ち出すのは勘弁してほしかった。
こうして私は外に連れ出されることになった。

そんなわけで気まずい雰囲気のまま出掛けることになってしまった。
窓の外を見るのに飽きた私は隣でハンドルを握るヴァニラを観察した。
ヴァニラは初めて私と出掛けたときと似たような格好をしていて、黒色のスーツを着て長く伸ばした水色の髪は後ろで一本に纏めていた。
初めは物凄く嫌われていたが今はよく世話を焼いてくれるし、嫌々ながらも話し相手になってくれる。

「何を見ている?」

ヴァニラは金色の瞳を横にずらしてジロリと私を見た。

「何でもないよ。」

ヴァニラはきまずそうに前方に視線を移した。
後部座席のディオさんが低く笑った。










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