心配性
ヴァニラは私のことを嫌っているのによく私の面倒を見てくれる。
「気を付けて歩け。貴様に怪我があるとDIO様が気を悪くなさる。」
「ごめん。」
屋敷の庭を散策していたら転んでしまった。大した傷ではないが予想以上に出血が酷く、傷を洗い流すために部屋に戻る途中でヴァニラに発見されて手厚い手当てを受けた。
膝小僧には包帯が頑丈に巻かれて間接が少し曲げづらい。
「巻きすぎじゃない?」
「黙れ。化膿したらどうする。」
黙々と包帯を巻き続ける彼は若干呆れ顔で前にもこんなことあったような気がするなとふと思った。
「庭に植えてあった薔薇、誰が植えたの?」
屋敷の中庭には小さな薔薇の苗が植えてある。
私が屋敷に来たとき、中庭は誰も世話をしていないのか荒れ放題だった。それでも部屋にいるよりは中庭にいる方が幾分か気も紛れるので最近はよく来るのだ。
「知らん。大方バステト神か女教皇(ハイプリエステス)だろう。」
「?、他にも此処に住んでる人いるの?」
「あぁ。貴様には言っても理解できんだろうから言わないでおく。」
「失礼だな。」
「ふん。」
漸く包帯が巻き終わったらしくヴァニラは手を離してくれた。
「ちょ、ヴァニラ包帯厚すぎて立ち上がれないんだけど。」
「気合いでどうにかしろ。」
目の前で腕を組むヴァニラはどうやら手を貸してくれる気はないらしく、私は仕方なく自分で立ち上がろうとする。
しかし上手くいくはずもなくバランスを崩しヴァニラに倒れかかった。
「気を付けろ。」
溜め息を吐きながらヴァニラは私を立たせた。
「アイザ様、」
軽いノックのあとテレンスさんが部屋に入ってきた。
テレンスさんは私の足元を見て吹き出すと、
「アイス、巻きすぎです。」
と言って笑った。
それ見たことか、そんな風にヴァニラを見上げると頭を軽く叩かれた。
カイロの街は昼過ぎになろうとしていた。
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