「フフッ、ダイゴ。敵は多いようだね?」
…。ボクは今、かなこちゃんが出ると噂で聞いた(正確に言えばミクリに誘われたんだ)から、ミナモシティで開催されるポケモンコンテストライブの会場に来ている。観客席に案内されると、ミクリはもちろんだけど、明らかにルチアちゃん目当て(もちろん…コンテストの内容なんかじゃないよ)っぽい男とか、ユウキくんだったりと…色んな人が観に来ているようだ。
「かなこちゃんは、初めての挑戦だろう?微笑ましいではないか!」
…。隣では妙にテンションが高いミクリ。くしくもその理由が…衣装にある事に気づいたのは、すぐ後だった。
「…なっ!!」
何だあの服…!ルチアちゃんとお揃い…じゃなくてあんなに露出の多い服を着るなんて…!見た目の可愛さにも増して、男たちのテンションがおかしい事になっている…!ボクが呆気にとられているとミクリは、こんな事を言う。
「フフッ、ダイゴ。敵は多いようだね?」
「…。誰にも渡さないけどね…」
ボクの様子に何かを感じ取ったのだろう…それからミクリは、彼女の服について言ってくる事はなかった。
「…かなこ!お疲れ様!」
…。いち早く声をかけたユウキくんに何となく、距離を取ってしまった。すれ違う男たちの視線は確実に…、かなこちゃんの足、いや…腹?それとも……。
「…ダっ、ダイゴさん!?!?」
「…かなこちゃん!やあ、どうしたんだい?」
ボクが明らかに不自然な聞き方をするとかなこちゃんは来てたんですか!?と強めに言ってくる。とりあえず控え室に…とボクを案内してくれるのは構わない、けどそれが逆効果だなんてきみは、思ってもいないだろうね…。
「…ユウキくん!来てくれたんだ!」
控え室に行く途中で、ユウキくんに会った。まさか、来てくれるとは思ってなかったから…!笑顔で良かったぜ、と言ってくれて、それだけで何だか嬉しくなってしまう。
「それになかなこ、その服…結構、似合ってる…、なんてな」
「ありがとう!じゃあ、ちょっと着替えてくるね…?」
あ…れ…?あそこにいるの、間違いなく……。そして見間違えるはずもなくその人はダイゴさんで、私は彼を控え室に連れていく。
「ダイゴさん…こっちです」
はあ…。ダイゴさんにはこの格好、見られたくなかったのに…!怒られたくなくて背中を向けたら…後ろから優しく抱きしめられる。
「かなこちゃん…可愛いよ、すごく。…だけどね」
「…っ」
「きみを見る男たちの目線が…いたたまれなくてね…」
やっぱり…。嫉妬してくれてるのは嬉しいけど、大事なところは隠してるよ…?
「…このまま、監禁してもいいかい?かなこちゃん」
「…えっ!!」
な…、ダイゴさん…、何言ってるの…!?!?突拍子もない発言にかなり驚いてしまうと、今度は正面を向かされて抱きしめられる。その力がものすごく強くて…、あながち冗談で言ってないな、そう思った。
「かなこちゃん…キス、していい?」
「…こ、こんなところで!?誰か来たら、どうする…っ!」
いつも余裕たっぷりなダイゴさん。でも最近はちょっとだけ…、そうじゃなかったのかも、そう思うようになった。結局着替えるまでしっかり部屋で待っていたダイゴさんと手を繋いで会場を後にする。