「…っ、待って!!」
まるで重なってしまうかのように密着した身体。気づけば目の前にダイゴさんの顔があって…、どうしようもないドキドキ感に襲われる。
「…続き、したくない…?」
「…それは……」
怖い…きゅっと彼の腕を掴むと、わかっているよ、と離れていく。
「…かなこちゃん、きみはなかなかひどい子だね」
「え…?」
“いつまでもお預け喰らわされたら、いなくなっちまうかもな?”
ふとカゲツさんのあの言葉がよぎった。そしてまたそれを察してるかのように…ダイゴさんは言う。
「安心してよ、いなくなったりしないから…」
…けど、とまたずるい笑顔を向けてダイゴさんが言った。
「煽るような真似はやめてね……?」
…っ!!怖い…でも…ダイゴさんが望むなら……。自分の中にもだんだん…そんな気持ちが芽生えてきた時、事件は起こってしまうのだった。
今日は隣のエンジュシティにて、スズの塔と焼けた塔の見学ツアー。スズの塔はまたしてもギシギシ言うから、ダイゴさんにしがみつきっぱなしになってしまって、ご迷惑おかけしちゃった。
「ふふ…やはり怖い?」
笑顔だけど、どことなく不思議な空気が漂ってたのは…今思えば、気のせいじゃなかったみたい。スズの塔を見学し終えると、ちょっと電話だ…ってダイゴさん。
「少し、あっちを見てますね」
焼けた塔の前まで来てみる。本当に上部が焼けてしまっていて、あえて直さない、そんな感じがした。